鎌田慧講演会「私の岩木山」の報告 講演の案内はこちらに保存
 
左・会場の岩木町文化センター(入口ポスターは飛鳥幹事のデザイン)、 右・講演する鎌田慧さん

10月2日、土曜日は晴れだった。講演会には約230名の方々が参集してくれた。
 本会ではこれまで、十数回の講演、シンポジウム・フォーラム・パネルディスカッション等を企画・開催してきたが、200名を越える参加者があったのは、今回の講演会が初めてである。
 開催にあたっての岩木町の様々な協力と支援は特筆されるべきである。案内掲示物の作成等まで公民館ですべてやってくれた。深く謝意を述べたい。

*受付と書籍販売コーナー*当日は鎌田慧さんの書籍販売も紀伊國屋書店と提携してなされた 
講演の概略
 「山と向き合いながら自己形成を図ってきた人は多い。自然と対峙することで、自分を見つめ直して人は成長する。私も高校生の頃は公園本丸で岩木山を眺め、対峙した。太宰治や葛西善蔵もそうであった。また、スキー場開発に関して、経営破綻した大型リゾート施設の建設によって自然が破壊された例をあげ て、私たちには後生(後世)にあるがままの自然を残す義務がある。儲けのための自然破壊は間違いだ。故郷の山の人工的な変化は望まない。」
 鎌田慧さんの講演内容の詳細は間もなく七つ森書館から出版されるので、それを待つことにして、参加・聴講者の感想・意見を披露したい。なお、講演の録音には斉藤幹事にご足労願った。すでに出版社にテープは送付済みである。


(感想・アンケート用紙に記名があったものは掲載を了承しているものと判断して簡単に記名した。)

☆講演会の企画・内容についての感想・意見☆
・鎌田慧さんには親近感を持ちました。岩木山はすばらしい山です。今後も大事に見守っていくべきだと思います。(弘前・澤田)
・岩木山にふるさとを見ている人は多いと思います。入院していた時、窓から夕焼けの岩木山を見て自然と涙しました。これから岩木山の開発を止めさせて、自然を守っていかないと岩木山に叱られます。(弘前・古川)
・鎌田さんの言う「岩木山から学ぶ。」(注1)という気持ちが分かったように思います。岩木山とともに生きたい思いです。次々と自然が破壊されていくことには耐えられません。(弘前・大和田)
・もう少し時間があればよかったです。内容が深いものであったので時間不足は残念でした。(弘前・成田)
・鎌田さんの本領が発揮される社会派的な内容がもう少し含まれていてもよかったのではないかと感じました。(弘前・宮本)
・ユーモアもあり楽しく拝聴しました。(南津軽郡・黒滝)
・岩木山の見方・とらえ方を歴史的に知らせてもらえることを期待したが、それとは少し外れたように思います。(弘前・齋藤)
・私たちは毎日何気なく暮らしています。その中で目の前の存在すら当たり前のようになっていて、格別気にとめないことが多いと思います。山でも自然にあ
るものでも、人間はそれらとの関わりなしには存在出来ないことが思い起こされました。(無記名)
・鎌田先生のお話は大変楽しかったです。ユーモアもあり、期待どおりでした。作品のフアンなのでとても満足しています。(無記名)
・淡々とした話し方でしたが、心に残り、考えさせられる内容でした。購入した書籍は「反骨のジャーナリスト」です。さらに学びたいと思います。いい企画をありがとうございました。大館の方の発言(注2)には感慨深いものがありました。(弘前・藤原)
・最初の十分間ほど、講演の導入部(注3)で大事なところなのに聴き取れなかった。残念です。弘前公園本丸への入場料を無料化する(注4)のも「岩木山を考える会」の活動の一つであるという指摘・提言はまさに「目からウロコが落ちる」思いでした。(弘前・倉坪)
・ケニアのサファリーパークのこと、長野、長崎県の話しなどスケールの大きな話しでありました。日本、世界の視点でヒトの利益のための開発か、それとも自然環境の重要性かを知ることが出来ました。(弘前・安藤)
・岩木山を山と思い、山とは岩木山であると暮らしている津軽人が東京に出る時、最初に岩手山を見て外の世界の広さに気づかされるという視点、どんなに山が災害を起こしても、それを憎まないし、逆に親しみを持ってともに生きて、人間が形成されていくのが自然(岩木山、ふるさと)だという視点、その偉大な山に対するいろいろな視点が示されたことがとてもおもしろかったです。(弘前・安藤カ)
・柔軟で広い視野から鋭い諸相の指摘はさすがだと思いました。ただ、岩木山に絞らないでその方面でのお話しをもっと聞きたかったのです。「ふるさとは単に自然へのノスタルジーだけでなく、そこで関わり交わったヒトとヒトとの人間関係でもある。」とのお話しには、はっと思わせられましたし、知的で大変おもしろかったです。(弘前・川村)

☆本会の活動についての意見や感想☆
・催しごとにはこれからも参加したいので、今回のように、少し遠くてもいいから、駐車の心配のないところで開催してください。(弘前・澤田)
・このような会があることを初めて知りました。もっと多くの人々に知られる必要があると思います。(弘前・宮本)
・大変よい活動をしていると思います。私も自分なりにテーマを持って個人的にも活動したいと思っています。(南郡・黒滝)
・「山の木一本たりとも切らせない」活動を継続してもらいたいとおもいます。未来のためです。(弘前・齋藤)
・日頃の活動に敬服しています。環境を理解する若い人たちの教育を岩木山を通して行い、人を育てて下さい。(弘前・安藤)
・私は夫をとおしてしか会の活動は知りません。友人と春、夏、秋と山菜を楽しむために岩木山に入っています。岩木山の豊かな自然は絶対に守っていきたいと思っています。それぞれの思いを大事にして活動を続けて下さい。(弘前・安藤カ)
・日々眺める岩木山の緑や蒼色の山肌が、荒れて剥げていくように見えるのが大変気がかりで、残念です。地方紙「陸奥新報」などで、この実態を特集記事で取り上げてくれないものでしょうか。大変よい企画でした。ありがとうございました。準備等のご労苦に深く敬意を表します。(弘前・川村)

(注)
1「岩木山から学ぶ」・(「岩木山を考える会という名称はおかしい。本当は岩木山から多くのことを考えさせられているのである。私たちは岩木山から多くを学ぶのである。」と鎌田さんは言った。)
2「大館の方の発言」・秋田県立大館鳳鳴高校十七会(となかい)という昭和三十九年一月岩木山登山で遭難死した山岳部員に対する衷心からの慰霊のため、「慰霊碑」を保守していこうとする同期生を中心とした団体。鰺ヶ沢スキー場開発と慰霊碑存続との関わり合いから、行き過ぎたスキー場開発に反対しており、スキー場との交渉などをしている。本会の「山と渓谷」掲載文などを参考に、スキー場に申し入れ等をしている。発言者は会長の木村繁美氏である。講演会その日、大館から来てくれて、会員となってくれた。これからは協力していきたい。
3「講演の導入部」・山と向き合い、自然と対峙することで自己形成が図れることを、本会事務局長三浦章男と岩木山との関わりを三冊の著書とその内容を紹介しながら語り、自分の体験へとつないでいった。
4「公園本丸への入場料を無料化」・下のページ(故郷の風景 カネにかえるな)を参照。

*朝日新聞10月31日発行「環境ルネサンス」*

鎌田慧さん本会主催の講演会と岩木山について語る