『岩木山のゼフィルス(蝶・そよ風)』展
−岩木山の蝶の展示−

 
ジョウザンミドリシジミ

*日時:2005年2月11〜13日(金〜日)

*時間: 朝10時から午後4時まで

*場所: NHK弘前支局ギャラリー
 (弘前市下白銀町21−6 NHK弘前放送会館内  電話:35−1800)

後援: 陸奥新報社弘前市教育委員会東奥日報社、NHK弘前文化センター、NHK弘前支局

 本会ではNHK弘前文化センターで4月期から講座「津軽富士・岩木山」(4月「岩木山の高山植物」5月「春のエフェメラルズを見よう!」6月「岩木山 は生物進化の実験室」)開講いたします。いつも眺めている岩木山のことをもっと広く知りたい、触れてみたいと思いませんか。これは地域に目を向け、地域 を掘りおこすことをテーマにして始める「地域密着型」の講座で、出来るだけ岩木山の実地観察を取り入れたいと考えています。
 今回のゼフィルス展も「岩木山の蝶」を知っていただくという願いの他に、7月に予定されている蝶の観察「ゼフィルスを見よう」の前段学習をも念頭にお いて実施されるものです。是非、今回の展示に触れて、さらにはドングリの森をすばらしいスピードで群飛する姿はまるで「そよ風が通る」ようだと言われる緑色に光るミドリシジミの仲間の美しさに出会える実地観察にも参加していただければ、この上ない幸せであります。

*展示内容:
(1)標本の展示… 作成:阿部 東
 *日本産25種 一部越冬卵、さなぎ *外国産30種 *蝶の見分け方標本

(2)解説物の展示… 作成:阿部 東
 1:ゼフィルスの意味 2:研究小史と青森県の研究史 3:出品リスト 4:生活史と して餌となるブナ、コナラ、ミズナラ、トネリコ、クルミ、カシ ワ、サクラ、マンサクなどの樹木 板 5:すみ分けの仕組み

(3)写真の展示… 写真の提供は、元県りんご試験場長・山田雅輝氏
 青森県産20種の卵、幼虫、成虫などの写真(30枚)

(4)ゼフィルスの生態等に関するVTRの上映… VTRの作成は工藤周二氏

(5)ゼフィルス類に関する書籍の展示… 提供は市田忠夫氏

(6)PCとプロジェクターを使った「蝶の図鑑・日本産100種」の上映… 本会事務局長:三浦章男

なお、解説・案内は阿部東ほか本会会員が担当します。

 
エゾミドリシジミ

 
オオミドリシジミ

 本会の写真展同様に多くの会員のお出でとお手伝いを要望致します。 これは春から予定されている文化センター(現場観察)講座のプレ(前段・導入)として実施するものです。多数の参加・鑑賞をお待ちしています。
 この展示会に足を運んで学習をしてから、講座を受講していただくことを期待しております。


寄稿

ゼフィルス・西風の神(ギリシャ神話)軟風・そよ風

阿部 東

 ゼルフィスは1816年に命名されましたが、テクラ(1807年)の命名の方が早かったので、同物異名として廃棄されました。しかし、これらの蝶の名前としてはもっともよく言い当てているということで、蝶愛好家の間では今も世界的に使われています。
 日本産では25種知られ、青森県には20種がすみます。ヒマラヤの麓からインド北部、ミヤンマー、ベトナム、中国、ウスリー、朝鮮、日本などにすみ、熱帯のジャングルにすむ種類が知られています。
 多くはドングリの仲間の葉を幼虫が食べます。ドングリの仲間の芽が開く頃卵からかえり、若葉を食べて成虫になり、冬越し(乾期)は卵の中で行うのです。
 ドングリやシャクナゲの森をすばらしいスピードで群飛する姿はまるで「そよ風が通る」ようであるといい、特にオスが緑色に光るミドリシジミの仲間は美しいのです。
 ドングリは関西ではカシの仲間、関東ではクヌギ、東北ではミズナラ、コナラに代表されますが、ブナもドングリの仲間で、フジミドリシジミという珍しいゼフィルスがあり、岳のブナ林はフジミドリシジミ(写真左)の産地として有名です。

 今回観察出来る種は、岳温泉辺りのミズナラ林にすむ、主としてジョウザンミドリシジミ、エゾミドリシジミ、オオミドリシジミ、アイノミドリシジミです。
 ジョウザンミドリシジミは青味の強いグリーンで、早朝の弱い光の中を飛び、9時頃にはエゾミドリシジミが活動します。エゾミドリシジミは人間の目で見ても少し黄色味がかっています。
 10時頃になると黄金色の強い輝きのアイノミドリシジミ(写真右)が飛びます。とはいっても森の中への日光の入り具合により、時間帯はきちんと区別されにくいものです。
 同じ森でも、種によって使う時間を変えていることになります。これを「棲み分け」とよんでいます。よく目立つキリモミ運動して自分の縄張り(テリトリー)を守るのはオスですが、メスは黒っぽくて目立ちません。
 ドングリの林が少なくなり、ゼフィルスは日本全国で数が少なくなりつつあることは青森県も同じですが、岳温泉付近は全国的に知られたゼフィルスの多産地なのです。(写真では輝きはわからない。標本でも本当はむずかしい。)