注 本稿は生原稿のままで未編集のものです。ご了承ください。

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関連リンク ふるさと雪形探訪−11 岩木山 D 奈良寛溜池
http://thinkaomori.cool.ne.jp/muroya/yukigata/050731/f_yukigata11.html


破壊された尾上山遺跡の現状
             小  山  純  夫

 岩木山の山麓からかなり下になるが、奈良寛溜池という古来から知られた遺跡がある。そこは尾上山遺跡として知られた場所である。聞くところによると土地所有者は三上誠三(羽柴秀吉)氏であるというが、昨年夏、自動車レース場となり破壊された。
そこには一面土器片が、また、中には「素敵な土偶」も落ちていた。拾える限りの土器片を集めて洗い、その後「尾上山遺跡」がカーレース場建設で破壊された旨を報告し、採集された遺物を市役所岩木支所内の市教育委員会に届けたが反応は殆どなかった。
現場では多くの土器片や石器が車に踏みしだかれている。さらに、遺跡は包含層を一部さらけ出した状態で、カーレースが行われている。
明らかに竪穴の存在を思わせる黒土の残留部分もあり、プレの存在を疑わせる石器も出ている。地山はプレが在ってもおかしくないもので、遺物は依然として地表面に出ており、早目の調査が望まれる。

   @表面採集した土偶(表)

   A表面採集した土偶(裏)

出ている土器は縄文の後期から晩期のものが殆どで、中には獣骨か人骨か不
明ながら骨も出ている。黒曜石片も数多く出ている。

 B上の右から2番目の黒曜石の切出
を除いて黒色頁岩の石鏃と珪質頁岩

 C黒曜石とチャート片・珪質頁岩片

 ブルドーザーで押して側面帯を作っている土山には大きな破片の土器が沢山入っている。斜面を雨で流された土器や石片が流下して、鞍部に溜っている(
F図の中央の低地)。

D左から磨製石斧・石匙・石棒片(石剣?)石斧は刃部の使用欠損がある。

E左の反面。石匙の頸部にはアスファルトか樹脂が付着している。

 この遺跡の所有者は三上誠三氏と聞いているが、行政指導で何とかならないものであろうか?
既に手遅れの状況だが、依然として遺物は雨水などに洗われて出てくる。当初買い物袋に一つ土器片を届けたが、まだまだ接合できそうな破片が埋没点在している。

F左側下が奈良寛の溜池・造成直後の状態

G最頂部の遺物包含層の残留部分(黒い部分)右側下が奈良寛溜池

晩期の土器片の中には、朱を塗ったものの出ており、表面採集でもいいから
早めにしたいものだ。このままカーレースが続くと、細粉化されていく。

 H上部の平坦面に残る焼土残留部分

 I竪穴の存在を疑わせる土色の違う部分

 何れにしても、@のような土偶も出ており、さしたる調査もなされないままに破壊されたのは極めて惜しい。近くには大森勝山のプレ遺跡もあり、地山に入った状態の黒曜石片が混入によるのか、そこに在ったのか、今となっては判然としないのも惜しい。