冠省 過日「尾上山遺跡」がカーレース場建設で破壊された旨を通報し、その後、教育委員会へ表面採集された遺物を届けましたが、遺跡は、包含層を一部さらけ出した状態でカーレースが行われています。明らかに竪穴の存在を思わせる黒土の残留部分もあり、プレの存在を疑わせる石器も出ている。地山はプレが在ってもおかしくないもので、遺物は依然として地表面に出ており、早目の調査が望まれる。

   @表面採集した土偶(表)

   A表面採集した土偶(裏)

 出ている土器は縄文の後期から晩期のものが殆どで、中には獣骨か人骨か不明ながら骨も出ている。黒曜石片も数多く出ている。

 B上の右から2番目の黒曜石の切出

を除いて黒色頁岩の石鏃と珪質頁岩

 C黒曜石とチャート片・珪質頁岩片

 ブルドーザーで押して側面帯を作っている土山には大きな破片の土器が沢山入っている。斜面を雨で流された土器や石片が流下して、鞍部に溜っている(F図の中央の低地)。

D左から磨製石斧・石匙・石棒片(石剣?)石斧は刃部の使用欠損がある。

E左の反面。石匙の頸部にはアスファルトか樹脂が付着している。

 この遺跡の所有者は著名な三上誠三氏と聞いているが、行政指導で何とかならないものか?既に手遅れの状況だが、依然として遺物は雨水などに洗われて出てくる。当初買い物袋に一つ土器片を届けたが、まだまだ接合できそうな破片が埋没点在している。

F左側下が奈良寛の溜池・造成直後の状態

G最頂部の遺物包含層の残留部分(黒い部分)右側下が奈良寛溜池

 晩期の土器片の中には、朱を塗ったものの出ており、表面採集でもいいから早めにしたいものだ。このままカーレースが続くと、細粉化されていく。

 H上部の平坦面に残る焼土残留部分

 I竪穴の存在を疑わせる土色の違う部分

 

 何れにしても、@のような土偶も出ており、さしたる調査もなされないままに破壊されたのは極めて惜しい。近くには大森勝山のプレ遺跡もあり、地山に入った状態の黒曜石片が混入によるのか、そこに在ったのか、今となっては判然としないのも惜しい。環境省の腕章はあるものの、関係のない場所で、個人の所有地であり、不法侵入と遺物の窃盗になるかも。これ以上、個人的には無理だろう。

 以上、簡単にご報告をしておきます。

 

  2006.9.15

                    山岳童子こと

                     小  山  純  夫  拝呈