6月13日弥生跡地観察会記事(東奥日報2010/6/18)


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岩木山弥生リゾート跡地に外来のシラカバ 正常な植生阻害か(「2010/5/25 火曜日」の陸奥新報の記事)

 開発行為で生態系が一時破壊された弘前市の岩木山弥生リゾート跡地事業中止から15年が経過して植生回復の兆しが見られるようになったが、市民団体「岩木山を考える会」(阿部東会長)が3月に行った調査で、本県の津軽地方には自生しないシラカバが全域で確認されるなど、特異な遷移をたどっていることが明らかになった。同会は「先駆的に芽を出す植物がシラカバに負け、出てこられなくなっている」とし、今後も推移を見守っていく考えだ。

 リゾート跡地は、第三セクター「弘前リゾート開発」(清算中)がかつてスキー場を中心とする開発を計画。県が1994年にスキー場建設に事実上のゴーサインを出したが、翌95年に保安林解除申請を取り下げたため工事は中断、事業は中止に追い込まれた。
 同会など6市民団体で組織する「弥生スキー場跡地問題を考える市民ネットワーク」は事業中止後、動植物の生態調査や市民を対象にした観察会などを実施。昨年10月の調査ではハンノキやヤマナラシなど数種類の樹木の生育が確認され、植生が回復に向かっていることが分かった。
 今回は3月21日の観察会に合わせて植生を調査。回復に向かう植物の遷移は見られたが、県内に自生していないシラカバの生育を多数確認。工事によって表土が削られた部分には、先駆けて芽を出すはずの「タニウツギ」「タラノキ」など光発芽種の生育が見られないなど、正常な遷移をたどっていないことが分かった。
 同会の三浦章男事務局長は「シラカバは隣接する弥生憩いの広場に植えられており、種子が飛んできたものと思われる。ほかの植物がシラカバに負けて出てこられず、植生回復は正常な移り変わりになっていない」と解説。
 また、鳥など動物が種子を運ぶ「ホウノキ」「アズキナシ」が生えていないことも確認され、「植物に必要な栄養素であるチッ素、リン酸、カリが十分含まれた土壌になっていないし、動物が活動する森林が形成されるところまで至っていない」と指摘した。
 リゾート跡地については、市と弘前大学の共同研究報告書で「自然の回復力」を学ぶ場所に位置付けることなどが提案されており、三浦事務局長は「自然回復は50年、100年といった長いスパンで見なければならない。我慢強く見守っていくことが大切」と話した。

【写真説明】本県に自生しないシラカバの生育が確認されるなど、特異な遷移をたどっているリゾート跡地(3月21日撮影、三浦章男さん提供)