<第3回>「岩木山弥生地区自然体験型拠点施設整備事業」をめぐる残代金支出の違法・不当性 

2) 必要性に欠けるムダな支出  その1

(1)本件「基本計画書」では、「自然体験型施設」として「岩木山学習館」「里山共生ゾーン、果樹園・農業自然体験ゾーン」「生態池(ビオトープ)」「多目的広場」及び「昆虫の森」を建設するものとしている。
しかし、弘前市及びその周辺地区においては、既に前記各施設と同種・同様の機能をもった施設が存在している。
 例えば、久渡寺こどもの森は「里山共生ゾーン」や「昆虫の森」に、小沢のトンボ他は「生態池」に、りんご公園は「果樹園・農業自然体験ゾーン」に、2006年に合併予定の岩木町にある岩木山トレイルセンターは「岩木山学習館」に、それぞれ相当する機能・役割をもったものと言える。

 また、やはり同年に弘前市と合併予定の相馬村にあるロマントピアは、日帰り・宿泊滞在共に可能な自然体験型施設として、様々な体験学習(りんご農作業体験や郷土料理調理体験、木工体験など)が可能であり、天文台や森林科学館なども設置されている。
 このように、自然とのふれあいを通じて学習や体験活動等ができる既存の施設が弘前地区に多数あるにもかかわらず、なぜ、今後さらに弥生地区にまで前記のような「自然体験型施設」を作らなければならないのか。
 また、既存の各施設はこれまで十分に活用されてきたのか。このような点に鑑みるならば、弥生地区に「自然体験型施設」を整備するという本件整備事業自体、いわば「屋上屋を架する」に等しく必要性を欠く事業であるといわざるを得ない。
 このようにそもそも必要性を欠く事業の用地を買収するための残代金として1億円余もの多額の公費を支出することは、前述した地方自治法・地方財攻法の規定に反する違法・不当な支出に他ならない。

(2)弘前市は、依然として、青森県が整備する大型児童館を、本件整備事業における拠点施設の一つとして位置づけている。

例えば、2004年3月の弘前市議会第1回定例会第2日日において、弘前市の当局者は、
「まず、拠点施設はどういう施設を指しているのかということでございますけれども。県が整備する大型児童館、それと、市が整備を予定している岩木山学習館、(中略)等をひっくるめた一連の施設であります」と答弁している。
 また、同年6月の同市議会第2回定例会3日日においては、
本件「基本計画書」の委託契約における特記仕様書に大型児童館についての記載がないことを問われた弘前市の担当者が、
「次に、5点目でありますが、特記仕様書についてのお尋ねでありました。その一つ、拠点施設としての大型児童館の部分が入っていないのではないかというようなお尋ねでありましたが、これは、当面、多目的広場としてやってまいりたいと考えてございます」と答弁しており、本件「基本計画書」のなかの「多目的広場」を大型児童館の建設予定部分と位置づけている。
 しかし、前述したように、既に2003年後半ころから、青森県は「大型児童館」の建設を見合わせるとし、その建設については白紙状態である旨が折に触れて示されていた。

 最近においても、2005年7月25日、青森県の当局者は「ひろさき市民ネットワーク21」からの確認に対して、
「必要性も含めて検討を見合わせている」
「過去に、大型児童館の設置に向けて調査をしようとしたこともあったが、財政状況の悪化で作業を打ち切った」
との公式見解を示しているのである。

 そうとするならば、本件整備事業のための用地買収は、建設計画が全くなく、施設の必要性も含めて検討すらなされてもいない「大型児童館」について、その建設予定地をも含めて確保しようとするものであることになる。
 これもまた極めて不合理であり、地方自治法2条14項・地方財政法4条1項にもとるものである。

次回に続く