高山の花は見て楽しみましょう。採らない。折らない。踏み込まない。
これらを守り、花を取りまく自然環境に目を向けながら観賞しましょう



シロバナミチノクコザクラの盗掘跡岩木山山頂直下南面進入禁止の場所
02年6月8日付け陸奥新報にも掲載されました

 高年者の登山ブームと併行して山野草ブームだと言われています。写真に撮るだけでは我慢が出来ずに高山植物を、植生などおかまいなしに採って(盗掘)していく人が後を絶ちません。採っていったところで、大抵の方は殺してしまうことを想像してしまいます。

 盗掘はもちろん違法なことです。自然環境保全法、絶滅の恐れのある野生動植物の種の保存に関する法、県立自然公園条例、自然環境保全条例などで規制されており、特に文化財保護法・森林法・自然公園法は、踏みつけ行為を含めて「採取」を厳しく禁じています。これらに違反すると罰金や懲役刑が科せられることになっています。

 ところで、盗掘(採取)は売買が目的でされていることが多いといいます。盗掘・採取・売買を仕事にしている者もいるそうです。売買(販売)は9年前に「種の保存法」で規制されましたが、その対象が、キタダケソウやレブンアツモリソウなどわずかに5種類ですから、「採取を禁じながら、売買を規制していない」という矛盾を抱えています。だから売買でお金儲けのために、いくらでも盗掘は横行しているのではないでしょうか。また、岩木山に咲く高山植物はいずれもこの5種類には入っていません。

 高山の花は氷河期からその場所にひっそりと生きてきた「生きた化石」であって、人々すべての共通の財産です。だからこそあなただけが独り占めにしてはいけないのです。

 特に「ミチノクコザクラ」は岩木山という限られた地域で、孤立化しながら独自の進化をとげてきた岩木山の固有種で、岩木山を愛する人はこの花の健気な生い立ちと歴史に胸がキュンとします。むしりとったり、スコップでがっぽりとはぎ取っていくことを未然に防ぐことも大切なことです。

(写真 シロバナミチノクコザクラは左(3輪だけ咲いているもの)がごく普通に見られるもので、右(一株に10輪ほど群れてつき丸みを帯びて見えるもの)が稀に見られるものです。一般的なものと比べてみればその違いがよくわかるでしょう。その違いゆえに盗掘者にとっては「貴重」なのでしょうが、植生上はもっと貴重なものであるはずです。私たちみんなにとって貴重なのです。)


そこで登山者の方々にお願いです!
お山で次のような人に出会いましたら声をかけ、やんわりと盗掘のことにもふれてください

 1、手提げ袋や不透明なポリ袋を持ち歩いて登山道脇に入っている人。
 2、いかにも「ゴミ拾い」をしているといわんばかりの恰好の人。
 3、山菜を採っているようなそぶりの人。(高山帯には山菜はない。)
 4、カメラを提げているが、撮影行動をしないで、手に移植べらなどを持っている人。
 5、夜間に山に登る人でかなり大きめなものを背負っている人。
 夜だから声のかけようがありません。実はこの手合いに盗掘者が多いのだそうです。(ご来光を拝むための夜間登山者は別として、まともな登山者は夜間行動は出来るだけしないものです。)


その他の盗掘の跡


無惨な盗掘跡、大きな穴になっています。岩盤の上に薄く堆積した土に根ざして命をつないできたものを奪ってしまった痕跡です。
根こそぎないのですからきっともう咲けないでしょう。(写真 左を拡大 ・ 右を拡大


数年前にコケモモが掘り盗られた跡です。何年経ってもそのままです。新しい植
生に替わるには気が遠くなるような時間がかかります。