公開シンポジウム
「鯵ヶ沢スキー場拡張と冬季アジア大会」 

 日時 10月21日(土) 13:00〜17:00
場所 弘前市民会館 大会議室

 

基調講演 「コクドに売られた岩木山」 谷口 源太郎(スポーツジャーナリスト)

 基調講演では西武グループの成長に関わる経営方針や開発の手口などについて、長野五輪と岩菅山、秋田県森吉町や岩手県雫石町、北海道富良野の事例などをもとに講演していただきました。余談では、プリンスホテルで提供しているスパークリングワインはIOCのサマランチ会長の親戚が製造しているものだそうです。ホテルで取り扱いをはじめた頃、堤氏がIOCの名誉委員に指定されたそうです。

パネルデスカッション 「“岩木山”環境破壊と冬期アジア大会を考える」

コーディネーター 牧田 肇  (弘前大学農学生命科学部教授)

各パネリストの発言について
正木 進三 (弘前大学名誉教授)...森林機能と水の浸透について詳しく説明していただきました。
望月 達也 (本州産クマゲラ研究会副会長)...クマゲラの生態。これからの保護の方向と種の交流の重要性について語りました。
高橋 俊哉 (弘前大学教育学部講師)...自然の中で楽しむはずのスキーが引き起こしてしまう自然破壊。スキーを「移動手段のひとつ、レジャーのひとつ、競技のひとつ」、それぞれの立場で考えてほしいと述べました。また、スキーを愛する者として、大鰐スキー場の窮状と鯵ヶ沢と客の奪い合いになることを心配し、市民の大きな共感を呼びました。
鹿内 博  (青森県議会議員)県知事により締結された「開催都市契約」が経費膨張のきっかけとなっている点をわかりやすく説明し、「例えばハトを開会式では飛ばさないといけないことになっているが、今回の県による39億円の積算では漏れている」と指摘し、その他、開閉開式の学生によるマスゲームや、座席の色分けや、選手村の食事の回数、JOCやICO役員の送迎車の問題などを述べました。鯵ヶ沢スキー場については、冬期アジア大会のコースには指定されていないものの、今後見なおしがされ、変更される可能性は十分あると説明しました。ちなみに、高校総体の予算の規模は700万円。先日行われた、アジア・ラグビー大会の予算規模は1億3000万円で、県費の支出は約5000万円だったと報告しました。この方向で進むと、「手作りの質素な青森らしい大会」にはほど遠い内容になると、警鐘をならしました。

助 言 者    谷口 源太郎

 フロアからは、青森公立大学の駐車場建設で、ニホンザリガニの生息が脅かされた事例や、スキー場の環境アセスと県の審議会の審議のあり方・構成人員の疑問、50ha未満の開発に環境アセスが不要となっている法的な問題、岩木山のスノーモービルの乗り入れによる環境破壊、「なぜ拡張を急ぐのか?」という疑問、スノーモービルの乗り入れの問題、アジア大会そのものの出場選手や盛り上がりについて意見が出され、あっという間に定刻の16:30は過ぎ、17:00頃までかかりました。

 まとめとしては、世論で町政や県政を動かすことはもちろんだが、全国のNGOに呼びかけ、西武グループ関連施設を使わない運動を広げ、堤氏を動かそう。と、提起があり、谷口さんからは、全国では一流から駆けだしの選手まで交流できるスキークラブ(ノザワ・スキークラブ)などの事例紹介もだされ、今後、自然とも調和した、新しい価値観を持ったスポーツの土壌を創りあげていかなければ、悲劇はくりかえされていくという広大な課題が、筆者にも見えてきました。


自然観察会(2000年10月22日)
 

拡張地を間近で見る参加者 美しい二子沼の紅葉(写真を拡大)