岩木山にもヤマシャクヤクは生育している

朝日新聞2005年5月14日付 「花おりおり」ヤマシャクヤクのこと

 「花おりおり」を読んで、その日のうちに、朝日新聞社広報部あてに次のようなメールを送った。
『ヤマシャクヤクについてのコメントで「関東以西の山地に分布する。」とありますが、実は東北の最北端、青森県岩木山でも確認されています。「関東以西の山地に分布する。」ということは、山と渓谷社版「山に咲く花」や同社版「野草の名前」にも記載されてはいます。
 詳しいことは分かりませんが、岩木山のヤマシャクヤクは白花ですが、これはベニバナヤマシャクヤクの変異でしょうか。
「野草の名前」にはベニバナヤマシャクヤクは「草姿や花形がヤマシャクヤクに似るが、ヤマシャクヤクが白花に対して”紅花”。」とあります。となれば岩木山のものは「ヤマシャクヤク」となります。
 もし必要であれば岩木山のヤマシャクヤクの写真をメールで送ってもかまいません。
 以上のことについてお知らせ下さい。』

岩木山のヤマシャクヤク(まだ蕾である)

 咲いたら写真を撮りに来ようと考えて咲き出す頃に来たら、根こそぎなかった。盗掘である。

 朝日新聞社広報部からは次のようなメールでの返信があった。
『ご指摘の点は関連部署に届け、今後の紙面編集の参考にさせていただきます。写真を送っていただけますとのこと、もしお願いする場合は改めてメールをさしあげます。』
『先日はメールをいただきまして、ありがとうございました。その後の御連絡が遅くなり申し訳ありません。よろしければ、写真をメールで送っていただけませんでしょうか。コラムの社外筆者が外遊中のため、次の御返事がまた遅くなってしまうかもしれませんが、お送りいただく写真を筆者に見てもらいたいと考えております。』


 それに対して次のような返信を写真4枚とあわせて5月24日に送信した。

岩木山に咲くヤマシャクヤク・朝日新聞社に送った4枚のうちの1枚。

 岩木山のヤマシャクヤク・みごとな株立ちである。大きな花が4個見える。近くには笹海老根(コケイラン)の群生地もあった。『連絡ありがとうございました。早速、写真をお送りいたします。いずれも2003年5月から6月にかけて岩木山で撮影したものです。蕾と開花した株は別物です。蕾の方は開花を待っていたところ、咲く前に盗掘されてしまいました。
 場所は教えられませんが貴紙の弘前通信部の記者を案内することは出来ます。今年もそろそろ咲き出すものと思います。ただ今季は積雪が多く雪解けが遅かったので、咲き出す時期の確約は出来ません。よろしくお願いいたします。』
ところがなかなか返信が来ないので30日に確認のためにメールを送った。
『失礼いたします。先日24日に送付しましたメール「ヤマシャクヤクの写真4枚」届いておりますでしょうか。容量が大きかったので、ひょっとしたら届いていないのではないかと心配になりまして、このメールで確認をしております。よろしくお願いいたします。』

その日のうちに返信があった。
『確かに受信しております。わざわざお送りいただき、ありがとうございました。』
これで一安心である。そして待つこと一ヶ月と一週間目の7月7日に次の連絡があった。
『御返事が遅くなり失礼申し上げました。いただいた御写真を「花おりおり」の担当記者が筆者に見てもらったところ、やはりヤマシャクヤクだそうです。
写真を見る限り、岩木山にもあるのですね。一般の図鑑ではなく、レッドデータブックには、東北、北海道に存在するとのことだそうですが、「もう少し現地での確認調査など検討が必要」…というのが筆者の感想です。
 貴重な情報をお寄せいただきまして、まことにありがとうございました。
以上で私と朝日新聞広報部とのやりとりは終わった。

 このやりとりを通じて私には「東北地方でもヤマシャクヤクは自生する」ことが理解出来た。しかし、何となく釈然としないものがしこりとなって残っている。
 それは、5月14日付「花おりおり」を見た多くの朝日新聞読者は「ヤマシャクヤク」は「関東以西の山地に分布する。」ものだと理解しているということである。このままでいいのかという思いでもある。
 多くの読者を抱える新聞が誤ったり、偏った情報を読者に提示して、「そのまま」で過ごすことはおかしいのではないだろうか。少なくとコラムの枠内にでも「訂正」、または「補足」という形で掲載するべきだと思うがどうであろう。
 私は植物関係とは無縁な素人である。植物関係の専門家たちにとっては、このような場合どのように扱うのだろう。
 一般的に図鑑等に表記されている「分布領域」に正誤が生じた場合、だれがそれを統一的に発表して訂正していくのだろう。そのような取り決めのようなものがあるのであろうか。いずれにしてもそれは「専門家」の内々のことだろう。
 このコラム「花おりおり」を楽しんで読んで見ている者の大半は、植物関係とは縁のない「ずぶの素人衆」なのである。素人にとって大事なことは「素朴な真実」であると考えがどういうものだろう。
「もう少し現地での確認調査など検討が必要」と筆者が言うのであれば、本会としても資料の提供から現地調査に同行するなど協力は惜しまないつもりである。

 なお、青森県の稀少な野生生物‐青森県レッドデータブック‐にも「ヤマシャクヤク」の表記がある。その抜粋を次に掲げるので参考にしてほしい。