ヤマオダマキ (山苧環) 陽ざしと草いきれの中に立つ山路の夏娘

 伐採されてから三十年以上は経っているであろうが、低木が多い林縁の登山道は陽ざしが強く暑いものだ。今日はその道をヤマオダマキと一緒に登っていた。所によってはポツリと一本だけ、ある場所では数本が競い合って太陽を全身に受けながら生えている。
 「曇天の山をだまきは睡き花」という俳句の主題は今日のように強い陽ざしの下では理解しがたい。ひょっとしたら、曇り空では元気が出ない花かも知れない。花の名称も馴染みが薄い。「糸繰草」とも書き、その由来は糸巻きの「おだまき」に似ているからと言う。
ヤマオダマキはとても強いという感じを与えてくれる花だ。暑い陽ざしの直射をひねもす浴びても一向にめげないところがある。登りながら、ついつい疲れに負けて「あなたは強いね。」と言葉をかけてしまうこともある。
 仲間には深山苧環がある。こちらは花の色彩感からして薄紫や薄目のブルーであり、上品であり華奢、手弱女の風情、しかも全体的に小振りである。決して強さを感じさせられることはない。