ナガバツガザクラ(長葉栂桜)  乳白色に輝き透る丹念な造りのランプ傘

 花の終わったイワウメの群れ葉から、たった一輪だけピョコンと首を出して咲く精緻な花、乳白色に透き通るランプ傘のようなツガザクラが目についた。その下の小さな窪みにはまとまった一群が咲いている。葉が太く長いことが特徴であるナガバツガザクラだ。
 そのすぐ傍には枯れた萼片をつけて垂直に立っているイワウメ、淡いランプの下で寝具にくるまって眠る赤子を見守る乳母の風情である。さらに、ハイマツの茂みから顔を出して、上から覆うタカネスゲはまさに揺り籠に掛けられた紗(うすぎぬ)であろう。山ではみんなが保ち合いながら生きているのだ。