ウコンウツギ (鬱金空木)  命の花園をたおやかな鬱金で染める垣根花

 今年はとても雪が少ない。この分だと大鳴沢厳冬の残雪(雪田)も7月中旬には消えてしまうだろうと予想していた。そして、その雪田を中心命の園を画然と深緑の樹林帯と区切る外縁は背丈の高い黄色の垣根花に覆われていた。たおやかに揺れ、柔らかい夏の風を楽しむ黄金花。ウコンウツギだ。
 雪消え間もないウツギの足下には遅咲きの純白なイワウメが、そしてこれまた遅咲きの濃い紅色に輝くミチノクコザクラが稜線をかすめ吹く谷風に揺れている。濃霧が去って明るさが増していく岩肌にはあきあかねが行儀よく張り付き、おにやんまが悠然と空を滑る。なんと多くの色彩を越えた豊かな生命ではないか。絵画や写真ではそれまでは描けまい。さらに枯れかかったコザクラの傍では、シラネニンジンが花を開いていた。そこは春、夏、秋という季節の風物に彩られていたのだ。山とは神秘で「あやしき」ところである。