ミヤマキケマン(深山黄華蔓)
           林中に頭を垂れ黄色に輝く仏の慈愛

 同じ山麓にある同じ登山道沿いなのに、まるで異文化または文化際性を感じてしまうところがある。百沢登山道の出発点である大鳥居から岩木山神社とその境内を進む。さらに神社裏に広がる杉や松を主とした鬱蒼とした木立群の中を行く。神社と境内に重厚な歴史性と荘厳さや霊気を感じ、背後の木立群には神秘の影やご神体岩木山に対するこんな森が岩木山を支えているのだという敬虔の情を覚える。よくこの森でキケマンに出会うのだ。名の持つ仏教的な意味は措いてキケマンの風情はこの森に調和していて相応しい。
 ところが、桜林を過ぎると風情は一変する。異文化の世界だ。木立はなく、砕石が敷かれ木立の代わりにリフト用鉄塔の林立である。道にはそこに相応しくオオバコ(車前草)が繁っている。ここに立つと俄に岩木山からご神体というイメージが消えてしまう。登山道を違えることになるが、ここに共通するのはやはりスキー場のある場所、長平から西岩木山林道にある登山口分岐までの道すがらである。