えっ!? 岩木山にコマクサが咲いている? 05.0918掲載

9/24 追加写真1
追加写真2
追加写真3(左掲写真の原盤)

 本会主催の第12回写真展「私の岩木山」にコマクサの写真(上のもの)が出展された。
撮影年月は今年2005年7月であり、撮影地は岩木山、コメントには「鳥海山西斜面に不法に咲いていました。」とあった。
岩木山には在来していない侵入植物を調査している本会としては正直驚くべきことだった。
 最近、登山客が無意識のうちに運び込む(登山客の靴や衣服に種がついて運び込まれる)岩木山には元来生育していない植物は年を追うごとに増えている。
 山頂部にはオオバコ、オランダミミナグサ、セイヨウタンポポ、ブタナなど多数見られる。そして、これらは昔からそこに生育している植物を駆逐しているのである。

撮影者は本会会員である。そこで、コメントにある「不法に咲いていました。」について、その真意を尋ねたら次のような回答があった。

 

不法という意味
 岩木山鳥海西斜面に咲いていました。
 これは本来の岩木山にはない花です。
 誰が植えたのか…。
 花はとてもきれいなだけにとても複雑な気持ちです。

 回答にもあるように「駒草・コマクサ」は岩木山には本来生育していない植物である。
これが撮影された鳥海山の山頂付近は礫地(小さな石ころのようなものが敷き詰められている場所)で、他の山で見られるコマクサもこのような場所に生えている。しかし、いくら地質的にも地形的に似ていても「コマクサ」は本来、岩木山には生育していない花なのである。
 数年前、といってもかなり前のことである…。
弘前在住のある者が「この場所にコマクサが生えていればいいなあ。」との思いから、植え付けをしたり、種を蒔いたりしたことがあった。
 そして、一時的ながら「この場所」にコマクサが根づいて花を咲かせたことがあった。しかし、人為・人工的なこの行為は植生的には、無理なことでいつの間にかコマクサは、自然に淘汰されて消えてしまった。
 もともと、あるがままの自然を存続・継続させることを大切にする「自然保護の立場から」は、本来ないもの「異物」を持ち込むことは決して許されないことである。
 この立場から「コマクサを植栽し、種を蒔いた」行為は厳しく批判されたものである。
 そして、コマクサ自体も消滅してしまったので「岩木山のコマクサ」問題はいつの間にか話題に上らなくなった。
 ところが、今年2005年に再び登場したのである。
昨年、八甲田山でも「本来生育していないはずのコマクサ」が発見された。当局は「誰かが意識的に植栽したもの」として、調査を今年も継続しているようだ。
 これは「植栽行為」を許容しているのではなく、結果的にはすべて「引き抜いて処分する」ことになるのだろう。
 何故ならば、本来の八甲田山という自然に、そこになかった「異物」コマクサを持ち込んだことは自然破壊だからである。
 岩木山、鳥海山頂上付近のコマクサも「異物」である。鳥海山山頂付近の自然を壊してしまうものなのである。このコマクサのために本来そこに生えている植物が枯渇してしまう恐れもある。

鳥海山の山頂まではリフトの終点から徒歩で数分の距離だ。しかも、最初の取り付き部分だけが急勾配できついが、あとはほぼ平坦地に近く、歩きやすい。つまり、リフト利用の登山客は誰でも、そこに行けるのである。
 誰でも行ける場所に「コマクサ」が咲いていれば、きっと多くの人がやって来るに違いない。「岩木山には普通咲かないコマクサ」を楽に見ることが可能となれば、もっともっと多数のお客がやって来そうである。
しかし、これを「見せ物」にすることはやめよう。このコマクサは本来この岩木山にはないものである。つまり、ウソごとであり、ニセモノなのである。

誰が植えたのだろう。誰が種を蒔いたのだろうか。それとも数年前のものが、今年また芽を出して花をつけたのだろうか。
植えた人、種を蒔いた人、あなたがたは間違っている。そしてこの人たちと関わっている人たちがいるのならば、本来の岩木山の「植生」を守り、岩木山の自然を保護するために早急に「抜き取り」をしてもらいたいものだ。

 国定公園を管理する県自然保護課もこの事実を見逃してはならない。即刻、調査して、自然保護行政からの善後策を来季を待たずに実施してほしいものだ。
「鳥が種を運んで来たのではないか」という仮説を立てる人もいるだろう。しかし、この仮説には、「鳥が運んで来るものならば、すでに数百年数千年前からこの場所、鳥海山山頂付近にコマクサは生えているのである。」と反論しておく。
 マスコミ各社もこの事実を社会に知らせてほしいものである。
写真展を取材に来た東奥日報と陸奥新報の記者には伝えてあるがどうしたものだろう。