鰺ヶ沢スキー場拡張計画について

  私は、岩木山の自然をこれ以上破壊してはならないと思っている。鰺ヶ沢のスキー場の拡張計画のことは地元の新聞で読んでいたが、どうも、環境アセスメントに関しても自然環境保全審議会での委員の発言などに関しても公平を欠いた結論が出されていると思うのである。

 すなわち、スキー場の拡張が先にありきなのである。そのために型通り審議会を開催し、その結論を意識的に開発推進に有利に利用しようとしたのではないかと疑われても仕方がない結論となっている。下心が見え見えの審議会の結論ではあった。拡張する方法もあるが、選択肢として「拡張をせずに現状でもっと集客ができる営業方法を考える」という方法もある。企業が経営に関する自助努力もせず、ただ安易に「拡張」という方向に走るのいかがなものであろうか。

 鰺ヶ沢スキー場の拡張工事によって得をするのは、限られた建設業者を含む一部の人たちだけであろう。多くの地元民にはメリットがすくない開発となるだろうし、開発によって失われる自然環境の大きさや弊害は計り知れないものがある。企業の社会的責任や地域への貢献を考える時、「スキー場の拡張の方針」は決し地元に歓迎される方向とはなっていないと考える。もちろん、津軽衆には歓迎されないし、自然と人間が共生していく上では最も不似合いな方向である。

 開発業者の言いなりでよいのであろうか。審議会の委員が問題だと言っていることを故意に無視し、なにが何でも開発の方向に舵を取っているように見えるのは私だけであろうか。賛成の委員の発言だけを重視し、反対をする意見や発言を封じ込めている現状は看過できない。鰺ヶ沢の町長は儲ける頭しかないようであるが、これまで地元の農産物や海産物がどの程度「西武」が買ってくれたであろうか。地元の食材は大きさが揃っていない、数量を確保できない、品質が落ちると言って関東方面からの食材を多く使っていると聞く。また、鯵ヶ沢町の町民がどの程度雇用されているのかを考えていただきたい。スキー場の拡張によって今より格段に雇用条件が良くなると言う保障はあるのだろうか。

 木村知事も鰺ヶ沢スキー場の拡張を問題なしとして認可しているが、何の為に開発を急ぐ必要があるのかが分からない。環境アセスメントに対して、問題が無かったと発言していることも私には理解できない。いま、拡張しようとしている付近は地質的にも問題がある場所だと聞いている。開発が進むと下流(鳴沢川)の水質などにも影響がでてくるであろうし、そこに住んでいる鳥類(クマゲラ等)や昆虫などの生環境にも悪影響を与えることは間違いない事実なのである。開発することで誰が得をして、誰が損をするのか。そして何を得、何が失われるのかをじっくりと考えていただきたいものである。

 有史以来、私たちの祖先が営々と守ってきた自然を簡単に南からきた業者や政治家に破壊されてたまるものかと思っている。一度破壊された自然環境は絶対に元にもどらないことは誰でも知っている。であるからこそ、自然環境を現状のまま後世に引き継いでいくことが大切なのではないかと思うのである。それが霊峰岩木山にたいする津軽衆の礼儀ではないだろうか。岩木山の夜景がスキー場の照明で台無しになっている。百沢スキー場の照明、高長根スキー場の照明、鯵ヶ沢スキー場の照明などがそうである。岩木スカイラインのスキー場も該当する。これ以上スキー場の照明によって夜景が汚されることは防がなければならない。

 結論として、岩木山をこれ以上開発する必要は全く無いと思っている。自然を今のままで後世に残して行く事が私達の義務だと思うからである。岩木山は特定の受益者の為に津軽に鎮座しているのではない。たかが、スキーをより楽しむためだけのため、特定の受益者だけのために利用されたのではたまったものではない。スペースシャトルの「エンディバー」から地球環境を見た宇宙飛行士の毛利さんは言っている。「環境破壊をいま止めればまだ間に合う、地球の自然環境の悪化は防げる」と。もう一度言う。これ以上、岩木山の山肌を削る必要は全く無いと考える。

弘前市 佐藤秀隆


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