2000年10月4日 鰺ヶ沢スキー場拡張工事現場を視察して

 (株)コクドが事業者側から事業計画を提示し、それをもとに県や森林管理局が事業者に対して「遵守することを約束した事項」と付したことと違っている箇所がみうけられる。これらは契約違反ではないだろうか。

 1) 既存スキー場との合流地点は完全に地均しがされて、「伐根」(伐採木の根や株・切り株)は全くない。「伐根」を残すことは樹木に最後の生命を補償する事だ。この切り株からやがて「孫生え」が育ち、森をつないでいく。先人たちは薪炭共用林にしても、この樹木の途絶えることのない命を大事にしてきたのだ。このような
趣旨を踏まえて「伐根」は残すということが約束であった。
 ところが、これらはスキーを滑る者からすれば、積雪に埋没してしまえば障害物ではないが、出ていると障害物の何物でもない。しかも、この場所は合流点で「交通量」(滑走者)が極端に多くなるところである。事業者がスキーヤーに与すれば障害物を除去しないはずがない。県も森林管理局も「約束を守らせ、このようなことをさせない」義務を負っているのである。明らかな約束違反である以上、全工区においてこのような違反事項がないかの点検をすべきである。

 2) リフトの最下部工事がなされている場所は本来は、大鳴沢の左岸で、そこは広い低地、つまり沢床と岸の高さがほとんどない状態であり、左岸に広がる河川敷状であった。ところが、その広い低地に土石を埋め立てて、1)の合流地点とほぼ同じ高さに「造成」してある。これは1)地点から剥ぎ取った土石を埋めたものであるらしいが、他から運んで来た物かも知れない。
 国有林内を借地している者が本来の地形を勝手に変えてもいいという約束はなかったはずだ。もし、あったとしたら、「自然保護」の主旨はどうなるのか。

 3) 計画によると「貯砂や土石止めが目的の堰堤工事が完了することを待って森林伐採を始める」としているにも拘わらず、まだ堰堤工事続行中、というより堰堤工事と同時期に伐採を始めている。

 4) 伐採木の集約に使われるワイヤー機構とその設置場所について
 イ)生木の幹に直接ワイヤーをかけていること。
幹の表皮が断裂・剥離されると樹木は枯死する。しかも伐採予定のない場所の樹木を使用している。

  ロ)動力用オイルの管理のこと
燃料油は危険物であり、一定量以上の貯蔵には許可が必要であり、現場にその許可書を掲示しなければならないにも拘わらず、それらが一切ない。

 5) 伐採木搬送に関わる道路について
道路敷設面積は借地に入っているのか。道路敷設によって植生に影響があるばかりでなく、搬送道路確保のために路面に石を敷いている。なお、この石は大きいものが直径30センチもある。しかも、「緑色凝灰岩」(グリーンタフ)であり、岩木山では見られないものである。*自然保護の第一義は「異物」を持ち込まないことである。このような指導がなされていないことから「一事が万事であろう」という見方が成り立つ。
* 採掘場所は西海岸の岩崎辺りであろう。大崩山の崖などがこの緑色凝灰岩である。

 6) 工事中の堰堤に流れ込んでいる沢の水は既に濁水化している。この沢の上部でニホンザリガニの生息が確認されたのである。さらに上部のブナ林は伐採されてしまった。ニホンザリガニの生息に関わる補償は具体的にどうするのだろう。

 7) 積雪期になる前に、スキー場拡張部の全面積を実測し、計画された面積との整合性を確認するべきである。森林の残置率が確実に計画と合致しているかを知る必要があるからだ。
 この残置率70%が許可を得るための大事な点であった。さらに、この残置率を計算するには1)から5)項までを加えることだ。ゲレンデ・コースに限ると残置率は高くなる。ここに残置率のまやかしがある可能性も否めないのできっちりと見抜かなければいけない。

岩木山を考える会 幹事  三浦 章男


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