容認なぜ急ぐ 県の対応疑問

 県自然保護課は、自然を守って県民に奉仕するのが、その任務。ところが鰺ヶ沢スキー場拡張問題では、正反対の立場を取ってきました。
 美しいブナ林、珍しい樹形のヒノキアスナロ林、クマゲラやイヌワシがすむ貴重な自然が破壊されるのに、保護課は私たちの主張を聞かず、拡張是認の態度に終始。事業者、保護課、鯵ヶ沢町などとの話し合いでは、世論を恐れてか、二度ともマスコミを拒否し、まるでスキー場開発の至上命令に縛られているという印象を受けました。
 果たせるかな、異例の再審議となった自然環境保全審議会でのごり押し答申の次にはまるで仕組まれたように、鰺ヶ沢町からの計画容認の要請。知事は計画推進に好都合な答申と、要請のみを「重く受けとめる」と繰り返すだけで、反対する多くの自然保護団体、学術団体、研究者集団からの要請にはいっさいノーコメント。水源破壊により生活基盤が失われる地元住民の切実な叫びにも、耳を傾けようとしないのです。
 弥生スキー場の中止を決断した知事が、今度はなぜ計画容認を急ぐのでしょうか。災害の危険性も、自然の貴重さも今度の計画地の方が、はるかに大きいのに。コクドの進出によって民宿が廃業に追い込まれ、スキー場へのアクセス道路の建設に多額の税金が吸い込まれたのだから、経済波及効果はにしきの御旗(みはた)ではあり得ません。
 知事の行政論理(あるいは倫理)がいったいいずこにあるのか、県民の間に疑惑の輪が大きく広がるのは避けられないでしょう。

岩木山を考える会顧問 正木進三


参考 岩木山リゾート開発問題(正木進三 岩木山を考える会)
(「日本科学者会議東北地方区第16回シンポジウム報告集」1997年 から転載)にリンクしています。


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