鰺ヶ沢スキー場拡張計画に対する取り組みの経緯

鰺ヶ沢スキー場拡張計画に対する取り組みのこれまでの経緯（1999年12月まで）

　私達は鰺ヶ沢スキー場を拡張する動きがあることを察知して以来、これを阻止するべきであると考え、1997年は事業者に、1998年は管轄営林署に、鰺ヶ沢スキー場拡張計画について質問しました。事業者の回答は曖昧模糊としていて、拡張計画があるという情報は得られず、鰺ヶ沢営林署は拡張計画について具体的な説明を受けていない、と回答されてきました。1999年２月24日、青森営林局（当時）にも質問しましたが、拡張計画についての明確な話はまだない、と言われました。

1999年３月16日（県訪問）
　県自然保護課で、課長補佐から拡張計画の経過を聞き、かなり以前から事業者との折衝が進められているのを知って、愕然としました。情報公開の原則を無視して、関係官庁は拡張計画をこれまで隠していたのです。
1999年５月31日（第１回会合）
　県自然保護課、事業者、鰺ヶ沢町、県地域振興課、岩木山を考える会が合同で開発予定地を視察をし、鰺ヶ沢町で会合を持ちました。私たちはこれを「マスコミに公開すべし」と主張。しかし、自然保護課は同意せず、筋の通らない理由で公開は実現しませんでした。
　開発予定地には、白神にも劣らぬブナ林があることを、参加者全員が確認しました。ところが話し合いの場では、自然保護課は開発を前提とした助言を事業者側に向けるだけで、私達の「鰺ヶ沢スキー場拡張計画に係る自然環境影響調査報告書（生物関係）」（以下、環境アセス）批判にはノーコメントを貫きました。
1999年７月12日（第２回会合）
　自然保護課は、またもや公開を拒否。終了後に記者会見をする、という妥協案を出しました。私達は、事業者側の環境アセスについての数々の疑問を提出し、開発予定地域の自然の貴重さを訴えましたが、翌日の新聞は、「話し合いは物別れに終わった。」と、報じたのみ。この会合の冒頭で、自然保護課は「拡張計画を前提とした内容を含む12項目の検討」を提案。与えられた時間は２時間でしたから、１項目あたりわずか10分。まともな議論ができるはずがありません。環境アセスについての私達の質疑は時間切れとなり、打ち切られました。
1999年７月20日　拡張予定地で自然観察会を行いました。
1999年７月22日（県より質問事項のとりまとめの通知）
　自然保護課から環境アセスに対する質問事項をまとめて、７月26日までに提出せよとの通知（７月19日付）が届きました。非常識である急な通知でしたが、私達は47項目の質問を提出しました。
　それに対する「事業者及び関係者」からの不誠実きわまりない回答が、８月も半ばを過ぎてやっと届きました。回答者が「事業者及び関係者」となっていて、関係者とは誰なのかが不明。この回答は、自然保護課から発送されたものでした。自然保護課は、このようないいかげんな回答を是認したものと解釈できます。自然保護課は、過去２度の会合において「仕切役」だと何度も繰り返すばかりで、岩木山の自然環境に重大な影響を与える拡張計画に対して、何ら独自の見解を表明していません。この回答に対して、私達は再質問状を提出しましたが、それに対する回答はいまだに届いていません。
1999年８月22日　コクド(株)会長と社長宛に要望書を郵送
1999年８月26日（県知事に計画中止の要望書を提出）
　私達は、日本野鳥の会本部・青森県支部・弘前支部とともに、青森県知事に「鰺ヶ沢スキー場拡張計画中止の要望書」を提出しました。木村守男知事に代わって自然保護課長が受理したので、事業者の環境アセスの不備を指摘しました。保護課では「全て自然公園法に準拠して指導しており、この規模の開発でアセスの必要はない。」という答弁を繰り返すだけでした。
　また、自然保護課は８月27日開催予定の青森県自然環境保全審議会にむけて、委員の出欠回答期限（８月18日）が過ぎてから、スキー場の拡張のために異例な審議事項の追加をしました。その理由を確認したところ、「クマゲラについて県も独自の調査をし、生息していないことを確認したから」と、説明。しかし、どんな調査を誰がしたのかは、明らかにしませんでした。
1999年８月27日（第１回自然環境保全審議会）
　青森県自然環境保全審議会の当日、委員の１人である日本野鳥の会青森県支部長が出席できなくなり、同会弘前支部長を代理として、野鳥保護の立場から「スキー場拡張計画に反対の意見書」を議長（審議会会長）に提出しました。ところが、この意見書は出席者に配布されず、読み上げさえもされず、握りつぶされてしまったのです。さらに、弘前支部長には委員の席があたえられないばかりか、オブザーバーとしての当然の発言すら認められず、発言すれば直ちに退席させると自然保護課（議長ではない）から威圧されたのです。単なる傍聴者ではなく、代理出席者として承認された弘前支部長に対するこの処置は、著しく礼儀を失し社会通念に反するばかりでなく、本来、議長の裁量にゆだねられるべき会議の運営に対する行政当局の不当な干渉です。
　さらに議長は、事業者の委託によって環境アセスメントを行った「みちのく野生生物調査会」の責任者であり、公正な審議の席から立ち去るべき委員１名の発言を容認し、公正な運営をするべき立場にもかかわらず、自ら業者側アセス支持の主観的な判断を表明したのです。
　しかし、この日の審議会では良心的な何人かの委員の発言によって結論は保留。一ヶ月後に再審議することとなりました。
1999年９月１日　
　県へ自然環境保全審議会の議事録および国定公園利用計画変更の審査についての公文書を請求しました。
1999年９月３日
　マスコミを対象とした現地視察会を行いました。
1999年９月21日岩佐参議院議員、岩垂日本野鳥の会副会長（元環境庁長官）、マスコミに「報告書（アセスメント）」の資料を郵送しました。
1999年９月24日
　岩垂日本野鳥の会副会長と青森県支部の対馬、針生、当会の事務局の三上が副知事と会見しました。日本野鳥の会と本州産クマゲラ研究会から知事へ、アセスメントについての要望書が提出されました。
1999年９月27日（第２回自然環境保全審議会）
　２回目の審議会では、自然保護課の管轄ではない「スキー場の経済波及効果」についての資料が委員に配布されていました。この間、審議資料として使われたアセスの概要に悪質な改竄（かいざん）があったことが明らかにされましたが、２回目の審議会において修正や謝罪は一切されませんでした。会議は開発反対意見が続出して紛糾に至り、異例の長時間審議になりましたが、議長（審議会会長）は開発適当の答申を決定。この答申をうけて11月１日、県知事木村守男氏は拡張計画を認可しました。
　その後、良識のある５人の審議委員からは、「再審議の要望」が県知事宛に提出されました。
1999年10月６日
　マスコミに「報告書」の改ざんについての資料を送付しました。
1999年10月９日
　「神秀次郎スライドのゆうべ」と、シンポジウム第７回「鰺ヶ沢スキー場の環境アセスメントを視る」を行いました。
1999年10月10日
　自然観察会第18回「鰺ヶ沢スキー場拡張予定地の視察ときのこ汁の会」を行いました。
1999年10月12日
　日本科学者会議青森県支部とともに県に公開質問状を提出しました。
1999年10月22～24日
　鳴沢川を守る会発足説明の集会に参加しました。
1999年10月28日
　日本科学者会議青森県支部とともに公開質問状の回答に対する声明を発表しました。県に公開質問状を再度提出しました。鳴沢川を守る会発足集会に参加しました。
1999年11月６日
　日本科学者会議青森県支部のシンポジウムに正木顧問をパネラーとして参加しました。
1999年11月16日
　鰺ヶ沢土木事務所に鳴沢川の災害と復旧工事について問い合わせしました。
1999年11月18日　鳴沢川を守る会が保安林指定の請願書を提出
　地元の鰺ヶ沢町民との会合では、以前はすばらしい清流であった「徳明川」が、スキー場建設で濁りの取れない川になってしまった事や、すでに小規模な土石流がおきている事実、今でさえ不足しがちな水資源がさらに減少するのではないかという不安などが語られました。11月18日、鰺ヶ沢町民約700人が生活基盤を確保するために、拡張予定地の森林保全を求めて「保安林指定の請願」を行いました。
1999年11月26日
　鰺ヶ沢土木事務所より鳴沢川の災害と復旧工事について返答がありました。
1999年12月３日　拡張予定地の森林保全を求める要望書（農水大臣）、県知事には撤回を求める署名をはじめました。

＊この鰺ヶ沢スキー場拡張問題に関しては、当会以外にも13団体から県や知事に対して要望書や質問状が出されています。
・日本野鳥の会本部
・日本野鳥の会青森県支部・弘前支部
・弘前勤労者山岳会
・勤労者山岳会青森県連盟
・本州産クマゲラ研究会
・日本昆虫協会
・日本生態学会
・日本昆虫学会本部
・日本昆虫学会東北支部
・日本科学者会議青森県支部
・白神市民フォーラム
・鳴沢川を守る会
・日本自然保護協会