=鰺ヶ沢スキー場ゴンドラの通年営業を恐れる=

 「1987年にオープンした森吉山の山岳スキー場建設をめぐって一番恐れていたことが現実化してきた。」そうである。
それはゴンドラの通年営業である。『森吉山登山、とりわけ本峰の登山は、一年中、簡単に可能となり、山の荒廃は加速する一方である。森吉山本峰などは、もはや、まじめな登山の対象からはずれてしまった。森吉山に登ってきたといっても、フンと相手にされないほどである。』という記事を秋田県自然保護団体連合連絡報に見た。
そして、直ぐに鰺ヶ沢スキー場のゴンドラ運行に思いが巡った。スキー場はこれまで冬以外に「大館鳳鳴高校遭難遺族の慰霊祭」と「秋の紅葉観覧」のためにゴンドラを運行している。前者は許されるにしても…(慰霊祭のために善意の運行であるとの姿勢も、秋の紅葉観覧という営利に結びつける布石であったのではないかと思うのは考えすぎだろうか)…そもそもゴンドラ設置と運行はスキー客の搬送のためだけであったはずである。許可の範囲もそれに限定されていただろう。多数の客があの地点(標高960m)まで行くことが許可された物理的な条件は「数メートルの積雪」がある積雪期であり、積雪に保護されて地表の植生が踏み荒らしに遭わないという事実を元にしたものだ。しかし、積雪のない時季はこの条件には全くそぐわないだろう。
 森吉山のように通年ゴンドラが運行し、観光客や登山者を運ぶようになったらどうなるか。岩木山にある五本の登山道の中でここの長平登山道は一番自然度が高い。言い換えるとそれほどにこの登山道を利用する登山客や登山者が少ないということだ。本会ではこの長平登山道の自然度を高いままで保護しようと数年来取り組んできた。今年度は「客観的」で「体系的」な調査をより具体的に進めるつもりでいる。
 それはなぜだろう。それは「鰺ヶ沢スキー場のゴンドラ通年運行」によって、森吉山同様にあの自然度豊かな登山道は踏み荒らされ、荒廃が加速し、岩木山に登ってきたといっても、フンと相手にされないほどになることを恐れるからである。
 ある県の事例だが…残雪の豊かな山域では、スノーモービル入山問題(静かな山域に爆音をまき散らす・野鳥の成長をさまたげる・貴重な樹木をなぎ倒す)に対して自然公園法にもとづく車馬規制とし罰則も加える方法をさぐったそうだ。ただこうなると国民に対して具体的に説明責任が生ずる。つまりスノーモービル入山者数、そのための被害の実際的なデータを示す必要がある。ところが行政にもこのデータがない。これでは規制ができないというのだ。
 保護団体としても、行政に、つまり一般市民に理解を得る要望を提出するときは、それなりのデータを蓄積する努力が要求されるということである。これが調査の第二の理由である。

 この連絡報によると秋田県では毎年自然保護課と県内の自然保護団体との話し合いが行われているという。今年は15団体が出席したと言う。青森県でもやっているのだろうか。やっているとしたら本会への主席の依頼がないのはどういうことなのか不思議である。