2006/09/16 東北自然保護の集い岩木山大会
−−水辺の保全と自然林の再生−− 記録編

 
開催要綱(左)、新聞掲載記事と解説(右)
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いよいよ「集い」は始まった。挨拶は弘前市高畑助役

13 :30 開会
 ・弘前市市長相馬氏の代理で助役の高畑幸氏の挨拶
 ・三浦事務局長から事務連絡(写真左)


13:47 記念講演 阿部東氏「岩木山の自然から−−種の多様性と保全」【.PDF】
 ・約700kb、デフォルト印刷ではA4横に2面取りで縮小されます。元ファイルの.docファイル(MS-Word)のいじり方も知らないし、あんなよく落ちる不安定なソフトの使い方覚える気も調べる気もサラサラないので、そのままpdfにしました。(管理人)文字が小さくて読めない方は、印刷後に拡大コピーするか、B4やA3の大判プリンタで出力すると良いでしょう。

15:20 各地からの事例報告と協議


「青森市横内水源地の植樹問題」棟方啓爾氏(青森の自然環境を考える会)

 ブナ植林問題は、2億3千万円という青森市民の水道料金(青森県の税金)を使ってミズナラ林(ブナ林)を伐採したという一つの事件。横内水源地は2600ヘクタール。海抜300メートル。60%が国有林。人工林が4割。ブナは2割より生えていない。ブナがあるからいい水だということは必ずしも正しくない。ここの水は日本一おいしい水に指定されている。
 この場所は県条例に基づき、青森市の水源林であるからという理由で開発規制地域に指定されている。こういう場所で行政によるミズナラ伐採が起こった。
ミズナラ伐採によって、水源涵養機能が著しく低下した。イワナが釣れなくなった。伐採により伐根から大量のミズナラの萌芽が生え、また残ったミズナラがものすごく増えた。その結果、植えたブナが伸びなくなった。
 市は平成4年からブナの幼樹16万本を植林した。
 問題の解決を模索するため、ブナ植林問題での意見交換会、現地討論会など、討議が112回行われた。その中では多数が反対という意見だった。
 会として、森林水文学の専門家や森林生態学者を招き意見を聞いた。専門家からはミズナラをそのまま育てるのが一番よい。ミズナラを切ってブナを植えるというのはいかがなものか、という指摘がされた。
 なぜこういうことになったか。ブナは優秀な木であるという考え方がある。しかしブナは必ずしも優れた木ではない。特に水源涵養林においては。針葉樹と変わらないというのが学者の意見である。
 NHKのブナ礼賛報道をきっかけにして、その反動もあって今もってブナ林礼賛を信じている方が多い。考えは改めていただきたい。

「白神山地に関わる問題」中濱和夫氏(赤石川を守る会)
 赤石川を守る会は、1987年青秋林道開設反対運動が起こる中で結成され20年になった。 来年盛大に20周年記念集会を開く予定である。
 旧弘西林道の建設により赤石川の水量がガタンと落ちた。井戸水も枯れた。鮎がハクランするという状態。海もモズクやワカメがうまく育たない事態も発生し、林道建設の影響を地元の方々は実感してきた。その中で反対運動が起こった。
 我々も砂防堰堤や漁場の調査や川の水利権などの研究をし、町や県や東北電力に水を返せと交渉も行った。
 ダムのある川は普通、発電が終われば水が帰ってくる。赤石川の場合は、発電所が十二湖の大池にあり、水が赤石川に帰ってこないで日本海側に流されてしまう。そのため水がますます少なくなる。
 発電所のダム取水の契約は30年だった。しかし県内の契約はすべて10年契約だということがわかり、運動を通じてこれを10年にしてもらった。また、わずかではあるが水を取り戻すことができた。今回の契約の更新ではその維持流量は夏の期間だけは3倍にすることになった。しかしまだ不足である。
 (森林再生運動について)21世紀はブナの保護から再生に向かわなければならない、ということで運動を始めて4年目になる。我々の森作りの方法は、杉を間伐し良い杉林を育てると同時に、間伐しながら広葉樹の苗が出てきているのでそれを大事にして、杉を育てながら広葉樹も育て100〜200年たったら、広葉樹の森に返していくという取り組みである。10人程度で月2日ずつ行っている。
 まだ解決できない問題、新たな問題が出てきている。世界遺産の地域全体に鳥獣保護区の網をかけてしまい、人間の暮らしと自然とを一緒にせずに、“入ってはだめ”ということを決めてしまった。しかし、この問題に関しては10年後には見直すということなので、よろしくお願いしたいと思っている。
 2000年集会の時に、白神プランというのを決めて提言した結果、青森県では入山が届け出制になるという成果があった。

「ブナの植林事業」今 正博氏(白神山地を守る会)
 植林事業は2000年からスタートした。ブナの種、薬のかけ方など作業の手順を知ることから始まった。津軽森林管理所鰺ヶ沢事務所を訪ね、何度も足を使い、進め方を確認してもらった。水面漁協さんにも関わってもらった。
 2001年に津軽沢林道奥山に植林地を3ヘクタール設定した。秋頃から植林事業の打ち合わせが始まった。そして白神ブナフェスタ赤石川実行委員会が発足し、2002年6月に第1回目の植林事業が始まった。500本の苗木を植えた。町がこのグリーンツーリズムに一生懸命取り組み、それ以降毎年やっている。
 ブナの育苗は2002年から始めた。2002年10月末赤石川上流にブナを種を拾いに行った。種の採取方法は様々試してみたが、結局手で一つ一つ拾うのが一番良いということになった。はじめは種をまいても根が枯れてしまう、育った苗を間違って切ってしまうなど、試行錯誤を繰り返した。またウサギが大敵でほとんどやられてしまった。しかしその後、トウモロコシでできた素材を使いブナを保護する方法を開発した。この方法が一番良いと思っている。
 苗の育て方であるが、温室で1年目の芽を植え替える。植え替えるときに根を半分切る。すると根が太くなる。それを繰り返して4年目には植樹できるほど大きくなる。ブナの実が不作の時はミズナラの苗を育てている。この間4年になるが、植林活動を通じて世界遺産白神の自然保護活動を続けてきた。こうした取り組みが認められ、東北で初めて環境庁長官賞をもらった。鰺ヶ沢一つ森学校に飾っているので是非見に来てほしい。

「自然再生活動・森林環境教育について」原田正春氏(津軽白神森林環境保全ふれあいセンター)
資料あり
 国有林は平成11年にそれまでの営林局の管理から森林管理所の管理に変わり大きく方向転換した。現在、津軽森林管理所はこの地域一帯全てをカバーしている。エリアは8万ヘクタールを越える。そしてこの森林の保全整備が非常に重要になってきている。しかし合理化の中で、従来8万9千人配置されていた人員が現在7千人に減らされている。現在の職員も高齢化が進んでいる。これからは是非とも若い人に入ってきてもらい、我々の技術を伝えるということも大事になっている。
 小学校などから、森林など自然に関わる授業をきちんと教えられる先生が少ないという状況から、森林管理所に専門的な立場で教えてほしいとの要請が増えてきた。日本山岳会は6月と9月に森林再生事業に取り組んでいる。ほとんどが杉林だが積雪が多く杉が育っていない。しかし一方広葉樹が足下に育ってきている。杉は整理をして、広葉樹を育てる事業を7年間続けてもらっている。その他にも地元の様々な団体にボランティアで森林の整備をしてもらっている。このような事業への対応が多くなってきているが、職員の配置も難しい中で、今年全国11番目のふれあいセンターがここに設置された。
 我々は、学校をはじめ様々な団体からの相談を受け、援助活動を行っている。森林教室と称して、森林に関わる事業でお手伝いをさせていただいている。職員が4名配置されており、専門的なプロ集団ということで是非利用していただきたい。無料で対応している。学校での自然観察会、出向いてのお話、巡視も行っている。届け出を出さずに釣りを行っている人もまだまだおり、職員以外に26名のボランティア等で巡視を行っているがまだまだ不十分なのが実態である。この4月にできたふれあいセンターを知ってもらい、職場、学校などでプロの森林インストラクターを宣伝し、利用していただきたい。

「南八甲田山の無断伐採問題」久末氏に代わって三浦章男氏(岩木山を考える会)が報告
資料は八甲田・十和田を愛する会久末正明氏のものと三浦章男氏のものが提出された。
 無断伐採とはいったい何なのか。それは、国立公園特別区域に指定されている南八甲田の登山道を登山者が勝手に伐採したり、道を付け替えたりしている事件である。1998年頃から顕著になってきて、2000年を過ぎた頃に誰がやったか明らかになった。林野庁、環境庁が“もうするな”といって決着したかに見えたが、またどんどん増えてきている。
 問題になっている登山道は、元々1936年から1939年頃にかけて自動車の通行のために造った道。そこに登山者が勝手に道路を造ってしまった。どんどん人が入るものだから、堤防も崩れかかっている。環境省はおそらくこういう状態を考えた結果、“南八甲田は自然をそのまま残していきたい”と発表したと思う。伐採された枝に林野庁がナンバーを振っている。私はこうしたプレートを400本見つけた。しかし一週間後に同じ場所に行ってみると、プレートのついていない枝がある。新たに切られているということだ。いわゆる違法整備となる。なぜこうなったのか。
 伐採した人は2004年家宅捜索を受けて逮捕された。しかし問題は解決しない。05年も06年も続いている。
 道路がこうなったことを、行政も登山者も業者も本気になって議論しないことが一番の問題である。
登山者や観光業者の言い分:歩きやすくしているだけ。周りの木を切ってぬかるみに敷いただけ。という。
それを受けて立つ側:環境省は“直轄地でないために県でやるべき”という。県は“公園事業は国の仕事だ”という。林野庁は“環境整備の歩道整備はしない”という。
 問題を直視しないその隙間をぬって、“歩きにくい道路を歩きやすくするくらいいいだろう”という意見。“どんどん歩きやすくしてどんどん観光客が来ればいい”あるいは、“整備をやめてしまえばガイドの需要が増える”という業者。
“どうすればいいか”と言っているのは自然保護団体だが、まっぷたつに意見が分かれている。
 昔からの登山者は登りながら自分で整備をする。じゃまになる石ころは寄せる。下草が出てくればちょっと刈ってあげる。伐採も目印になる範囲で切る。しかし、今の登山者はそういう配慮がなくなってきている。登山者、業者、行政が一緒になって話し合いの場につかない限り、問題は解決しないだろうと思う。登山をする人たちが、自然保護をしようとする人たちと一緒に運動を進めようと考えていないのが残念である。

「ラムサール条約と仏沼の現状と課題」小堀英憲氏(弘前野鳥の会)
資料あり
 仏沼は小川原湖のほとりにある。沼を干拓し湿地帯になっている。なぜラムサール条約登録になったかというと、オオセッカという貴重な鳥がいるから。オオセッカは世界で2000羽程度しかおらず、そのうち8割が仏沼に繁殖している。仏沼はオオセッカが世界で一番多い貴重な場所だと考えてほしい。ここにはシマクイナという珍しい鳥の繁殖も確認されており、青森県のレッドデータブックのランクAの3種もいる。
 仏沼の環境を維持している排水ポンプはすでに耐用年数が過ぎている。新たな排水ポンプの導入には3〜4億円がかかる。これをどうするかが新たな問題となっている。排水ポンプで常に水を吸い上げていなければ、仏沼は沼地になってしまいオオセッカの環境は失われる。ポンプが寿命が尽きては大変。是非予算をつけてほしいものだ。


「岩木山弥生スキー場予定地跡地問題」三浦章男氏(岩木山を考える会)
資料あり
 岩木山弥生スキー場跡地は、弘前市が大型児童館や自然体験型拠点施設を建てようとした場所で広さは44ヘクタールある。この地点にスキー場建設計画が進行している時点で、弘前市はこの真ん中にスキーゴンドラの基地を作った。この弥生問題は「岩木山を考える会」の歴史そのもの。そしてついにこれを推進しようとした市長を退陣に追い込み、開発をやめるという市長の誕生をみた。
 開発を進める現職の市長に対し、弥生問題反対派が3人立候補し、併せて67%の得票を得た。「岩木山を考える会」は、選挙中、反対派3名がお互いに足を引っ張り合うことはするなと主張し、結果的に選挙で勝利した。
 当初弘前市は弥生の土地(この場所は扇状地。過去に土石流があり、伏流水が流れているような土地である)をスキー場にしようとしたのだが、県はスキー場の開発を不許可とした。市はスキー場が無理になったので、今度は県の予算を当てにした大型児童館建設計画を打ち上げた。土地を整備するため(市は許可前にこの地の土をはぎゴンドラ棟をたててしまった)市はゴンドラ棟を壊し市税をどんどん使った。ところが大型児童館建設計画は県の財政難で無理になり、市はその代わり市独自の自然体験型拠点施設計画を立ち上げた。このような計画に今回ストップをかけることができたのである。
 岩木山を考える会では、このような経緯を経た土地を市民に知ってもらおうということで、自然観察会を開催している。新市長は森林の復元を口にしているが、復元の仕方が問題である。今多くの市民に復元の対象となっている現場をみてもらい、どうすればいいかをみんなで考えている。
 自然観察会では、十数年前からの自然の復元状況を観察する。伐採地の隣にミズナラ、コナラの林がある。その手つかずの森にはいると空気が違う。気温が3〜4度低い。これが本来の森だなあと、森というのは何なのか伐採地との違いがよくわかる。人工的に作ったビニールシートを敷いた池は泥が堆積して40センチもたまっている。これでビオトープをやるという計画だった。
 岩木山を考える会ではずっと地元新聞に投稿をし世論に訴えてきた。反対反対だけでなく、学問的に疑問が解ける活動もしなければならないと考えた。建設しようとする施設との類似施設の現状がどうか、扇状地とはどういうものなのか、など発表してきた。その結果、選挙は圧勝。今後、どういう風に復元するのか、我々はそれに参画していかなければならない。その結果、会として4項目を決定した。1,改めて環境評価を実施してほしい 2,里山の自然を回復する 3,市民にとって景観が大事 4,急ぐな、ゆっくりやろう。今後、ミティゲーションの考えかたを基本として進めていく予定。また、できるだけ多くの方に観察会をしてほしい。この前の観察会では5人の市会議員が参加してくれた。いい方向になってきたかなと思う。

(助言者より)
奥村清明氏
(白神山地のブナ原生林を守る会・秋田県自然保護連合代表)
 今日は7本青森県側の報告をいただいた。各県、ほとんど同じような問題を抱えている。横内水源地の問題では“ブナは優秀な木ではない”という気がかりな言葉があった。もう少しみんなで検討する必要がある。
 南八甲田不法伐採は微妙な問題。議論をする必要がある。自然保護をする人と登山者とは対立する。是非明日は東北各地の問題を集中してやっていただきたい。

森 治氏(下北野生生物研究所所長)
 今回何らかの形でブナと関係のある話が出てきた。下北ひうち岳という火山がありその南側が後半にブナ林があり、北側は日当たりのいい場所にブナ林が広がっている。相当広いブナ林である。このブナ林が1960年代にチップ材で二束三文で売られた。ブナが雑木に入っていた。非常にもったいないことをした。
1970年を前後して、あちこちでブナ伐採と再生のための実験が行われている。ブナを切って笹を殺すために炭酸を使って林業用除草剤、ベトナムで撒いた枯れ葉剤を空中散布し大変な問題になったこともある。その後、ヒバと広葉樹の混交林は択抜することによってもっとよい林にしようと取り組まれた。
 ブナの天然更新をやったけれどもなかなかうまくいかない。前田さんが考えたのは母樹を残し、何度もカシ更新を繰り返しブナ林の再生実験をした。今回の今さんの話では非常に手間をかけてブナ林を作っている。大変なことだと思う。
 自然の中でその条件によって出てきた林を大事にすべきだ。ブナ帯といってもブナだけがあるわけではない。いろいろな木が混ざって多様性が出てくる。木に変化があることは野生動物にとっても変化がありありがたいことになるのだ。
 ブナに間違った考えがある。ブナはしなやかでおれないという話。ミズナラの枝はブナよりしなやか。論理のつじつまを合わせるために、実際とは違ったことが宣伝される。神格化させるために間違ったことが一人歩きしていることがあるので一言述べておきたい。


2日目9:00〜10:30

「津軽半島における残存ブナ林の分布状況およびクマゲラ痕跡調査の報告」
望月達也氏
(ブナ帯調査室・クマゲラ研究班)
資料あり
 クマゲラの研究を20年ほどやっている。津軽半島を渡っているクマゲラがいるかどうか、ということを中心に研究している。このクマゲラ調査に行っていて伐採現場にぶつかった。激しい伐採が今行われているという実態を報告する。以下スライド説明:下北半島薬研温泉。恐山の宇曽利湖の縁のところ。北海道の江差に近いところの保安林。
 北海道の松前半島は広大なブナ林がある。白神山地の核心地域よりも広いと思う。山の奥まで作業道が伸びてブナ伐採が行われている。作業道の奥の森も伐採対象となっている。ここは違法伐採が行われたのが発覚したために、今オンブズパーソンにより裁判が起こされている。
 伐採はガンガンやられている。ほとんど土砂は沢に落とされている。ここにはニホンザリガニがいる。調査したら100何匹、ものすごい数のザリガニがいた。国民の財産としてとっておかなければならないような原生林がどんどん破壊されている。国有林はここまでやってしまったか、というのが率直な感想。ブナだけではなく生態系そのものが破壊されている訳なので、自然全体が助けを求めているという状態。北の森が助けを求めている。皆の力を合わせて連絡を取り合って対処方法を見つけていきたいと思っている。

参考映写:三浦章男氏(岩木山を考える会)

 岩木山でも、水源涵養保安林等の標識がある場所で、どんどん切られている状況がある。この百沢スキー場の北側の斜面がどんどん切られている(スライド)。標高700メートルくらいこういう実態が岩木山にもある。

「会津地域における森林生態系保護地域設定等、国有林保護計画の概要」
高橋淳一氏
(高山の原生林を守る会)
資料あり
 会津の国有林の話をしたいと思う。会津に20万ヘクタールの国有林がある。そのうち森林生態系保護地域が9万2千9百ヘクタールが。残ったのが10万ヘクタールで「緑の回廊」ということになる。
 平成13年、会津に伐採計画が浮上した。天然林を伐採するという話が出て、伐採反対運動が始まった。関東の渓流釣りのネットワークの皆さんが全国の署名運動を行い、平成14年東北自然保護の集い福島大会の時に、伐採中止の表明をしてもらった。その後、会津の天然林をどうするかということで議論してきた。
 福島県の3分の1が会津地域。色がついたところが国有林(スライド)。紫と赤が森林生態系保護地域。赤がコア。緑のところは全て緑の回廊にしようという計画である。緑の回廊といっても木は切る事が出来る。そのうち天然林で100年以上のものは原生的な状況にあるということなので、択伐しようということにしている。奥会津の森林生態系保護地域の特徴はコア部分が1割にも満たないということ。ほとんどがバッファゾーンである。つまりほとんどが山菜採り渓流釣りができる地域だということである。ゼンマイ取りを糧にしている人が多く、この人たちに配慮しなければならない。人が入ることによって自然を維持してきたという経過があるので、白神の経験を教訓としながら、そういう立場でゾーンを設定してきた経過がある。

「津軽半島におけるニホンザリガニの分布と生態」その保護を巡り
奈良岡隆樹氏
(青森県立五所川原農林高等学校林業科教諭・自然科学部顧問)
資料あり
 ニホンザリガニは北海道と北東北にしかいない。北東北は大半の生息地が青森県に集中している。体長はだいたい5センチ前後。流水地で20度以上にならないところに生息する。レッドデータブックでは青森県ではBランクである。冬に交尾し2月頃から産卵し、2月から5月まで抱卵する。1回30個から40個しか抱卵しないので繁殖力が弱い。ザリガニの生息地は流水地の脇に穴が開いている。水深は1〜2センチ。川の底にはこけが生えているが、ザリガニがいるとコケが生えていない。穴は30〜40センチくらいの深さがある。
 調査は津軽半島、屏風山地帯をもっとも注目している。この地域を集中的に調査した。沢になっているようなところを手当たり次第に調査し、これまでに9カ所発見した。屏風山地帯の縦走砂丘、この横の砂丘の窪地に沼が点在している。分水嶺からの左側(西側)は日本海側に流れる。右側(東側)は津軽平野に流れる。左側には1カ所も生息地が見つかっていない。
 右側の沼に入る上流に小さい沢がありそこに生息している。しかし、現在沢は完全に分断されて孤立している。沢がなくなるとニホンザリガニは絶滅する。10年くらい前まではたくさんいた。ところが去年の秋にいったら1匹もいなかった。いなくなると復活しない。どうして絶滅したかはっきりわからない。リンが影響しているのか?徐々に絶滅している状態なので、周りが畑地なので農薬がしみ出しているのか?
 この屏風山地帯の生息地(スライド)は泥がたまっている状態で巣穴もなくなっている。
 この生息地(スライド)にもゴミが捨てられており、探したが2〜3匹しか見つけられなかった。徐々に少なくなっているようだ。
 津軽山地の最南端部浪岡の聞き取り調査では、昔はたくさんいたという話。神社のわき水があるところでは、ニホンザリガニがぽつんと残っている(スライド)。神社付近の高速道路の周辺も結構残っている。ここにはザリガニだけでなくて珍しい動物が生息している。スナヤツメ、スジエビ、イバラトミウオなど。
 白神山系には一番南側に生息している地域が、中村側の上流の生息地。岩木山の西側は中村側に流れている。その中村川の池に生息している(スライド)。ザリガニの調査をして農家の方と会う機会があるが、全国的にも小さい地域にしか生息していないということが農家の方々もよくわかっていないので、調査がてら、ザリガニにも気を遣っていただければとお願いしている。

秋田泰治氏(宮城仙台のブナ林と水、自然を守る会) 
 仙台のブナ林について報告する。私たちは今年ようやく、平成15年から県内の市民の山といわれている「イズミガ岳」の森を仙台市に買い取らせることに成功した。全体として、里山を含めて森林を保護する運動を進めてきた成果である。
(経過について)イズミガ岳山頂を仙台のある業者が買い占めてしまった。その後西武がリゾート開発をねらったがバブルが崩壊して頓挫してしまった。イズミガ岳を守ろうと、1年足らずのうちに4万2千の署名を集めることができた。これは広瀬川の清流化の運動とほぼ同じ規模の署名数である。
 一つ一つの運動が個別にやられるものではないと考える。運動は連携してやらないと進展しない。幸い、仙台周辺ではブナの伐採は止まった。今では、せっかく造林したのだから混交林はいやだという森林管理所も私たちと相談しながら進めるようになった。仙台では700人くらいの会員がいるが会費は無料でやっている。会報だけで40万くらいかかるが、カネが足りなくなればカンパを集める。すると60〜70万くらい集まる。こうしてやると運動は苦しくないし楽しくできる。

長南 厚氏(出羽三山の自然を守る会)
 ふれあいセンターができて2年半になる。ここが核になり良い活動をやっている。
 森林生態系の巡視員が100名ほどおり、報告会をやっている。その中でスノーモービルの問題が出されている。春先に走り回るためにウサギが子育てをしなくなってしまう。そうするとイヌワシの食べ物がなくなってしまう。ふれあいセンターが中心となり、自然保護団体や環境省などいろいろな団体が連携をとり調査をした。公園の管理計画にその地域を入れてスノーモービルが入れないように準備をしている。ふれあいセンターでは来シーズンの指導ということで看板を立て、ある程度の規制ができる方向に進みつつある。
 朝日連峰の北の方に鳳池の登山道に近道が出来て山が崩れそうになっている場所がある。巡視員会議で問題となり、合同で調査をやり対策をとる予定となっている。一緒にできる部分が増えてよくなっている。
 朝日連峰の避難小屋を造る計画があるが、森林生態系の委員会ができて、非難小屋を造る場所が森林生態系のコアの部分であるということを明らかにし、その結果計画がストップになっている。環境省の計画を林野庁が止めた、という形になっている。今後の運動に参考になると思う。

「自然保護憲章について」
三浦章男氏
 (日本勤労者山岳連盟)
 資料あり「労山自然保護憲章」小冊子
 これはまだ青森県の団体に渡っていないもの。なぜ、東北自然保護の集いで山岳団体のこういうものを発表するかということだが、登山者と自然保護運動をしている人とはあまりあわない。端的に言えば山にはいるのがなぜ悪いのか、という。歩きやすくすることがなぜ悪いのか。他の人のために登山道を整備してやっている、それになぜ文句をつけるのか、という。しかし、山がなければ登山ができない。山に登る人たち自らが山を守っていかなければならない。自然保護を進めている人たちと登山者は握手しよう、というふうになってもらいたいと思う。
 憲章では、様々なことが書かれている。たとえばトイレ。岩木山の山頂にはトイレがある。その下にも、その下にも・・・トイレがありすぎ。トイレ協会の会長さんが言うには、登山口の入り口には必ずトイレを設置しなさいという。そうすれば山頂にはトイレはいらない。
 もう一つ重大なことは、日本勤労者山岳会は25000人の会員がいる。この中で謳っていることの根本は、この登山者がもっと自然観察をしよう、と。もちろん登山者は気象などの自然観察をする。しかしそれは全部自分のため。しかし登りながら登山道の状態を観察し、登山報告に記録すれば、それをまとめて登山道情報の報告ができる。
 地域に密着した登山をしよう。ほとんどがパッセンジャー(ワンスラー)。通過登山が多い。自分が行ってくればそれでいい、ということになる。ふるさとの山という意識を持って登山をしようじゃないか。心のふるさとという山という思想を広めていこう。自然を傷つけない登山をしようという考え。登山者が登ることにより山を傷つけているという意識はほとんどない。しかし、実際に傷つけているのだから、会として教育をしていこう。
 決して対立関係にはならないこと。弘前市の環境行政と対立しない。観光業者とも対立しない。問題点を出し合ってまず話し合いをしよう、ということ。これを望ましい行政との「パートナーシップ」と表現している。真の協同を大事にしている。登山道の整備にうちの会は関わった。土留めのためにナイロン製の繊維が使われていたのでそれを指摘したら、次は椰子の繊維に変わった。青森県の自然保護課、八甲田山の整備にも使われるようになった。指摘すると、良いことは行政も対応するようになる。対立せずに話し合いを重視して取り組むことが必要である。

「観光客の事故対応に関わるガイド業務上の問題」
高橋仁志氏
(みちのく花見遊山)
 去年追良瀬の歩道上で枝が客に落ちて半身不随になった。裁判となり判決は行政が負けた。城ヶ倉大橋の下で自分で足を滑らせて亡くなった。今、裁判になっている。
 暗門川の岩石は堆積岩。砂岩や泥岩でもろい。一昨年、こぶし大の岩石がガイド中の自分の肩に当たった。隣に70歳の老人がいた。幸い肩がずれただけで済んだが、頭に当たれば大けがか死亡、老人に当たればもっと大変なことになった。そういう危ないところに年間8万人がきている。雨が降ってもどんどん客が来る。
 いろんな観察会を団体でやっている。スズメバチ、万が一けがをしたり、亡くなったらどうするか。日本自然保護協会では観察会の時に全て保険に入っている。
 現在、県内のガイドの連絡協議会では、もし事故があったらこうするというアプローチを考えている。善意で観察会に連れて行ったが、事故で訴えられるという時代がきているので。注意喚起をしたかしないで大きく違うということもある。十二湖や白神岳の方はいまひとつ意識が低い。あまり危険区域がないということもあるかもしれないが、時代が変わってきているので問題提起をしておきたい。

(助言者より)

森 治氏
 森林生態系保護地域の話が二つほどあった。恐山周辺は原生的ヒバ林というとことで保護地域となっている。前回バッファ部分が非常に狭かったが、今回地域を拡大しバッファを広くすることにした。その地域の性格によってどんなことをするかということが非常に重要。最近では輻輳林の施業を進めている。

奥村清明氏
 森吉山は国土の開発によるスキー場。ほんとに恥ずかしいようなオープンの仕方。今二つのスキー場ともに売りに出されている。地元の町村は少子高齢化で山をのぞけば何にもない。そこで山をダシにして人を呼びたいという発想が出てくる。山の尾根をアドベンチャーレースということで走らせることを地元の自然保護団体の方がやっている。
 地元の畑からのリンのためにニホンザリガニがいなくなったという話が出てきたが、秋田は自殺率が日本一。自殺者のほとんどが農業。なぜ秋田が多いのかという特集をアエラがやった。その原因がリンという話。リンの中毒は死にたくなることにつながる?半分本当じゃないのかなと思っている。自然保護ということは自然を守らなければ人間が守られないということである。一般の方々に、貴重なものをなくすということは我々自身の自滅につながるのだということを、きちんとした理論で説明できるようにならないとだめだと感じている。
 今回の集会は大変ユニークだった。高校生の参加は初めてだ。遺伝子の問題が阿部先生からお話があった。ブナは苗木を持ってきて植えればいいという問題ではない。登山家と保護、動物と共存、自然を守ることと入山者・観光客の激増との折り合い。阿部先生は学者がどうのこうのといっても最後は市民の運動でやるしかない、ということもいわれた。この辺をさらに議論を深めていただきたい。


<全体討議>

安藤晴美氏(岩木山を考える会)
:相馬や西目屋の方たちから、クマやサルの食害で人間が生きていくのにままならないという相談を受けているのだが、どういう風に考えていけばいいのか教えてほしい。

竹谷清光氏(岩木山を考える会)
:クマの話が出たが、今年の白神山地は実のなるものが非常に少ない。山の奥に入ってもクマの気配が少ない。今年は里に出る可能性が多い。ブナ、ミズナラ、ブドウ、アケビ、トチなども少ない。えさ探しに里に出る機会が多いと思われるがいかがでしょうか。

瀬川強氏(岩手・カタクリの会)
:今年はたぶん出没するだろうということでクマ出没注意報を県で出している。委員会を設けてクマの出没に対処する予定。

高橋仁志氏(みちのく花見遊山)
:青森は見つけ次第駆除されている。

佐々木玲子氏(青森・自然公園指導員)
:環境省に聞いたら、今年鳥獣保護区の中でも駆除されている。二度くらいは爆竹で追い払って、それでも危険性があるということで駆除しているということだった。頭数の把握はしていない。そのような環境省の答えだった。

棟方啓爾氏(青森の自然環境を考える会)
:ブナは優れた木ではないと発言したが、私は、皆さんが期待しているほど優れた木ではないということを言いたかった。ブナは保水力が格段にいいということになっているが、水文学では樹種による保水力の差があるというのは科学的根拠がない。土壌がきわめて豊饒なことが保水力の違いを生むのだと思う。水文学では根の深さによって保水力が決まる。木の保水力の問題を問えば、ブナは保水力がない方である。

秋田泰治氏(宮城仙台のブナ林と水、自然を守る会)
:ブナがとりわけ優れたという宣伝をしたことはない。どういう樹林帯を作り、どういう土壌が作られていったかということが大事だ。林野庁がブナを乱伐した結果どういうことになったか。ダムを造ったのは国土交通省。ダムを造るのは絶対いやだというのは、森林そのものの問題としてあるのだから、切られすぎたから切らせない、ということで運動を進めてきた。これからの運動で考えなければならないことだ。森林の再生をどういう形でやるのかは地域によって違うと思う。
 地域の特性にあった森林施業の問題を考えていかなければならない。クマの話は、現在の話ではない。下北の人はほとんどの人が犬を飼っていた。漁業の町なので農産物は非常に貴重だ。そういう関係で昔から人間と動物の共存という関係ができている。トウモロコシを植えてクマに食べさせるということは人間の思い上がり。クマを育てるのも100年構想でクマが生きられる環境を作っていくことが必要。

高橋淳一氏(福島高山の原生林を守る会)
:ブナの植林の問題や登山道の問題などの報告があった。福島でも同じような事例がある。林業公社でわざわざ伐採をしてブナを植えている。森林組合員が委託を受けてやっている。なんと白神からブナを持ってくるという愚かなことをやっている。河畔林のところに、緑の募金の原資で緑の少年団が植樹祭をします、ということで、腕くらいのエゴの木を倒して指くらいのエゴの木を植えていた。馬鹿じゃないか。仕組みとして予算を消化するような仕組みが現存しているのでは。登山道も本質的なことがわかっていない。吾妻では裸地化がひどい。幅が10mになっている。原因は脇道をどんどん造った結果だ。歩きにくいから上を刈り払って新しい道を造る。問題提起をきちんとして協議の場を作っていくことが大事だ。相手のフトコロに入っていってきちんと議論をすることが大事だと思う。

佐久間憲生氏(出羽三山の自然を守る会)
:長い間保護運動をやってきている中で、ブナだけが最高の樹種だという視点で取り組んだことはない。それぞれの地域に適した樹種がある。たまたまブナが東北の極相林であったがためにブナがクローズアップされた。
 そろそろ森林生態系保護地域の運動、世界遺産の保護運動から抜ける必要があるのでは。地域地域に白神に匹敵する場所がある。白神がなぜ世界遺産になったか、青秋林道を止めるために、自然保護協会が最終的にくさびを打つために、世界遺産を手だてとしたことがきっかけだった。そこをわきまえることが大事。今いろんなところで行政が自分の地域を世界遺産にしようということでがんばっている。そこには観光客誘致という動機が働いている。自然保護団体としてのきちんとしたベースを持って運動を進めることが大事である。

松山 力氏(青森自然観察指導員の会)
:岩木山の蔵助沢の大土石流の脇があんなに林がまばらで腹が立った。岩木山の土石流がなぜ発生したか裁判で証言を求められてきた。行政の言い分は、スキー場が土石流の発生した原因だという我々の主張に対して、スキー場があったので土石流はあの程度ですんだのだという主張をした。こういう考えのもとに今でも伐採が行われているのかと考えると腹が立つ。

黒滝松太氏(岩木山を考える会)
:エキノコックス問題。数が増えてきているようだが。青森県の現状を教えてほしい。

高橋淳一氏(福島高山の原生林を守る会)
:水辺の河川の環境ということで河畔林の保護ということも叫ばれてきている。ところが行政が河畔林をわざわざ切って、その中に観察路を作っている。河畔林が非常に少なくなってきている中では、もっと水辺の環境に目を向けることが必要となっているのではないか。

原田正春氏(津軽白神森林環境保全ふれあいセンター)
:岩木山の皆伐状態の指摘があったが、おそらく国有林で薪炭共用林だと思う。薪炭共用林については年次計画の中で行っている。

三浦章男氏(岩木山を考える会)
:津軽森林管理所の業務課長に、伐採状況を聞いた。年次計画を見せてもらった。切ってほしくないという地元の人もいるのではと言ったら、連絡が取れなくなってしまった。
 水芭蕉沼というのが嶽にある。青森「水辺の郷」という新規事業を青森県が打ち出して、常磐野という部落と「水辺の郷」の運営を当たってほしいという要請が会にあった。しかし地元が拒否をして合意とならず。結局地元がやることになった。我々が努力をしてここまで自然を回復したのに、地元は常に観光を考えている。これをどう乗り越えていけばいいのか。

阿部 東氏(岩木山を考える会)
:水辺というのは非常に微妙な環境だ。今年の春、木造のベンセ沼を見に行ったら、沼の隣接地をだいたい2メートルくらい掘っていた。いい砂を全部とって山の土を埋め畑にしていた。その結果ベンセ湿原が茶色になっている。地元に協力をしてほしいと県にも訴えたのだが・・・おそらくベンセ沼はだめになってしまうだろう。
 もう一つブナの植樹の問題。植樹自体は自然を回復するためによいことだと思うが、一つの隘路があることを考えるべき。昔、検土壌のお手伝いをした。五所川原の市内でもその土の花粉にはほとんどブナの花粉が含まれている。ブナは極相林に至る長い歴史を経てブナの林ができている。ブナの生えているところは豊かである。というのは歴史があるから。裸土にブナを植えるというのは間違いだ。現在の自然林は歴史を経ている。植林の作業は頭から否定するつもりはないが豊かなブナの林をつくりたい。ミズナラを切ってブナを植えるなどおろかなことはやめよう。
 クマ、サルの食害の問題。どうしたらよいか。サル1000匹いる。そのうち24〜5匹悪さをしたサルを殺すという。悪さをするサルほどバイタリティがある。せめて無差別に殺してほしいと言った。きちんと棲み分けしてもらうことが大事。猿やクマは新しい生活様式を手に入れてしまった。これをどうするかが問題。みんなで考えていくことが必要。

小堀英憲氏(岩木山を考える会)
:エキノコックス問題だが、津軽はキツネがほとんど少なくて見かけることはいない。ほぼ心配ないのではないかなと思っている。

棟方啓爾氏(青森の自然環境を考える会)
:南八甲田の登山道の問題で具体的な提案をしたい。是非話し合いの場を、青森自然を守る連絡会議が呼びかけ人になって持っていただきたい。洗掘によって自然道に溝ができている状態を止めることも緊急な課題である。

鹿内 博氏(青森の自然を守る連絡会議代表)
:県内の自然保護団体の連携がうまくいっていないというのが、この間痛切に感じたこと。提言については「岩木山を考える会」とも今後相談をしていきたい。

<まとめ>

森 治氏
:クマやサルの農作物被害。クマを10頭捕まえて追跡調査をした。手伝いの猟友会のメンバーや畑の持ち主は、一度捕まえたクマはまたすぐ戻ってくるという話だったが、戻ってこなかった。発信器は見張りがきく。しかし県はそういうことをやる気がないようだ。青森県ではクマに金をかけることはしないという方針らしい。秋田県では大々的に調査をした。
 今は、山菜採りが大量に山の奥にはいるようになった。タケノコの時期はまさに商売。人だらけ。クマと人との距離が近くなってきている。サルに関しては、保護管理計画ができた。内容は棲み分けを主目的としている。ところが青森県は棲み分けのための手続きをせず、安易な方法で「捕獲」ということをする。我々の運動が国の政策にならない。日本という国はそういうものだろうと思う。

奥村清明氏
:本大会の「アピール」が非常に良くまとまっている。集いは東北六県持ち回りだが、各県のカラーが非常に濃厚に出るところ。こんなにすばらしい集会を弘前で開いていただき非常に勉強になった。来年、岩手県の皆さんがきっとすばらしいカラーを出してくれると思う。どうもありがとうございました。

鹿内博氏
:クマ、サル関係の予算は議会に出てくれば通ると思うが、担当レベルで予算要求をやめてしまうということがある。総枠の中で金がない、ということになってしまう。最近の行政改革の名の下に地方財政がかなり厳しくなっている。しわ寄せがこういう形で出てきていることを補足しておきたい。


第27回東北自然保護の集い・岩木山大会アピール

  岩木山の南麓に湯段谷地があります。そこには毎春ミズバショウが咲きほこり、ミズバショウ沼と呼ばれています。かつてここが農村公園計画によって、環境が著しく変えられようとしたことがありました。「岩木山を考える会」は「沼本来の自然を壊さないように」と申し入れ、植生も在来種でまかない、植える木種選定などを提案しました。 その結果、従来どおりの豊かな自然環境が残り、ゴマシジミ、ゲンジボタル、岩木山麓から絶滅したセンフリなどが回復しています。さらに本会では「水源を確保する」「隣接する畑の影響を最少にする」「在来樹を植栽して林を広げる」ことを提案しています。 また、十数年間継続してスキー場の「開設」反対運動とスキー場予定地として伐採された跡地は「もとの森林に復元」せよとの運動を進めてきました。その結果、「もとの自然に復元されるらしい」という光明が見えてきました。
ところで、青森県は緑が多く自然がいっぱいだとよく言われます。見た目には都会よりも「緑」は多いのですが、その大半はりんご園の緑です。特に岩木山を中心とする津軽地方の緑はそれであり、農薬使用も全国で一番多いといわれています。津軽地方からは「りんご園の開発」によっていわゆる「里山」がほぼ消滅してしまいました。唯一残った「里山的な自然」は岩木山麓だけです。
 しかし、その貴重な山麓もりんご園や畑の開墾、スキー場、ゴルフ場、ゴミ処分場、または人工物の建設で消滅しかかっています。このような状況は東北各地でも同じではないでしょうか。それでも農薬の使用を抑制することで「サワガニ」等の復活が見られたという報告もあります。

 今後の自然保護運動は、「これからどうするに主眼を置き、攪乱と里山の関係に学びながら伐採と植樹をすすめ」、「農業・漁業・林業」など第一次産業としっかり向き合っていくことが肝要だと思います。
 一方、ラムサール条約によって、生活環境を支える生態系として「湿地の保全・再生」が呼びかけられました。条約では、産業や地域の人々の生活とバランスのとれた保全を進めるために、湿地の「賢明な利用(湿地の生態系を維持しつつそこから得られる恵みを持続的に活用すること)」を提唱しています。これらも今後の自然保護運動には必然的に取り込まれねばなりません。
 特に「森林等の復元」に関しては…1.今ある自然を大切にする。2.特定の種だけではなく生物のつながりや生態系全体を復元する。3.よその土地の種ではなく、もとあった種を回復する。4.点の回復ではなく、空間的な生態系のネットワークを回復する。5.人間がつくりあげてしまうのではなく、自然の回復力を助ける。6.自然の変化をモニタリングしながら、順応的な管理を実施する。7.行政だけですすめず、計画段階から積極的に地域の市民参加を図る。…等に十分配慮しなければなりません。

 以上を「第27回東北自然保護の集い・岩木山大会(水辺の保全と自然林の再生)」のアピールといたします。

2006年9月17日 


その他 06年09.22付

1.「事例報告と協議の記録文」を発送しました。
2. 第27回東北自然保護の集い・岩木山大会で決議されたアピールの紹介。

 すでに本会ホームページで紹介しております…「事例報告と協議の記録文」が出来て印刷も完了しました。さらに決算の概略も出来ましたので参加者のみなさんへ郵送致しました。

 総ページはA4判裏表9ページとなり、長形3号封筒で送料は90円となりました。参加者で住所の把握出来ている方にはその住所宛に、団体参加の場合は代表者の住所宛に参加者の数分送付致しました。
 なお、参加費(宿泊・懇親会費を含む)を事前に払い込んでおられた方で、緊急な事情で参加出来なかった方には「全資料」と「事例報告と協議の記録文」を送付致しました。中には定形外(大きさ・重さ)扱いで送料は980円となり宅急便よりも高くなったものもありました。この方々からは、参加費は「懇親会の直前キャンセルが出来ない」こともあり、半額頂戴致しました。ご了承下さい。
 
 決算につきましては、あくまでも「概略」です。本会が幹事会の決定を受けて赤字分の補填を致しましたが、そのことの詳細につきまして本会会員あてには次号の会報でお知らせいたします。